投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
文字通り“潜在”する「内日本」の秘められた力とは?
コントラリアンにだけ見えるマネーの“潮目”
世の「常識」とは真逆のことを考えるタイプの人のことを、「コントラリアン」という。日本語に訳すならば差し詰め「天邪鬼(あまのじゃく)」といったところだろう。
普通の友人に選ぶには「天邪鬼」は時に困り者だ。しかし、金融資本主義の中で生き残るためということになると、話は違ってくる。なぜなら前々回のこのコラムでも書いたとおり、米国に始まった現代金融資本主義は、時にマスメディアを総動員しつつ、「いかにして大衆からカネを巻き上げるか」という仕組みそのものだからである。そして、私たちがえてして「常識」と思っていることは、よく考えてみると大手メディアがそのようなものとして描いていたに過ぎないということが間々あるものだ。そんな時、私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンは完全に術中にはまってしまっている。
だからこそ、金融マーケットで生き残るためには、そうしたプロパガンダがむしろ隠蔽しようとしている“潮目”を読み取る能力こそが必要なのである。それは時に、多くの人々が「常識的にはこちらだろう」と考える方向とは真逆なものとなるに違いない。そうであるにもかかわらず、いや、そうだからこそ、「こちらが正しい」と断言することは、特にムラ社会的な伝統の強い日本では相当難しいことではある。
しかし、読者諸賢の周囲にもいるであろう個人投資家としての“達人”に一度尋ねてみて頂きたい。きっと彼・彼女らは等しく「天邪鬼」であり「コントラリアン」であるはずだ。なぜなら、誰も気づかず、隠されている“潮目”だからこそ、そこに潤沢なマネーが眠っているからだ。
とりわけ歴史的な金融メルトダウン下、世界規模のシステム転換が各所で起こっている現状においては、なおさら「常識」に寄りかかることなく、その真逆を行く思考が活路を拓くことが珍しくないのである(この世界大のシステム転換について、詳しくは拙著『大転換の時代――10年後に笑う日本人が今するべきこと』(ブックマン社、2009年1月刊)を参照されたい)。
歴史に埋もれた「内日本」への熱い視線
そのような観点で考えた時、最近、気になって仕方が無いことが1つある。それは、米国流金融資本主義がなだれを打ったように倒れた後、日本マーケットの主役は果してこれまでどおり「外日本」なのか、はたまた「内日本」なのかということである。
「外日本」とは太平洋岸のことであり、「内日本」とは日本海側を指す。太平洋岸には、日本の小学校で必ず習う「太平洋ベルト」がある。いや、栄えているのはそうした工業地帯ばかりではない。東京・名古屋・大阪・福岡という商業・サービスの中心地もそこにあるのだ。その意味で「外日本」が持っている地位は不動のようにも思える。
一方、「内日本」といえば、豪雪地帯である。一般には漁業、あるいは農業といった第一次産業が主体となっている地域であり、「外日本」が持っている華やかさと比べると、やや質的には違う存在であることは間違いない。いや、もっとはっきり言えば、地域によってはかなり経済的に厳しい状況に置かれ、あるいは過疎に悩まされている地域があるのが「内日本」なのである。
だが、ここであえて「コントラリアン」になり、内日本を一度眺め直してみた場合、一体何が見えてくるだろうか。――そう思いながら歴史書を紐解いた時に気づくのが、「内日本」こそ明治の昔から日本において最も注目されてきた油田地帯であったという事実なのである。しかも、日本勢が内日本での油田開発を小規模に行ってきただけではない。実は真っ先にこの地域が石油文明の中で持ち得る重要な戦略的意義を見出したのは、他でもないロックフェラー率いるスタンダード石油だったのである。“越境する事業主体”の典型だ。
スタンダード石油は明治33年、資本金1,000万円を投じて当時の日本に「インターナショナル石油」を設立する。そして大車輪で日本の「内日本」における油田開発に着手したのであった。
これに対し、明治政府を率いる元勲たちは一斉に反発した。「石油は将来国家の大富源となると思うが、日本人が捨てて顧みなければ外人にその利を奪われる恐れがある。越後の有力者は奮励一番、大いに採掘、利用の方法を講ずべし」と松方正義は連呼した。その上、外資好きで知られたあの大隈重信ですら「外人の内地企業によってわが国の石油業は絶体絶命になる」と叫んだのである。正に「内日本」に湧いた石油は、ナショナリズムの源泉となったのである。
ところがこのインターナショナル石油、最後は実にあっけなかった。「はかばかしい成果」が上がらなかったとして、その資産の全部を日本石油へと売り渡し、日本における採油・精製事業から撤退したのである。まさにあっけない幕切れであった(岡部彰『石油(産業の昭和社会史)』日本経済評論社・参照)。
時代は下り、現在。「内日本」の筆頭格である新潟では“燃える氷”として知られるメタン・ハイドレートが沖合いで大量に発見され、日本がいきなり資源大国になる可能性すら出てきていることは記憶に新しい。一方、米国が金融メルトダウンで購買力を失い、日本の輸出産業にとってもはや最高の商売相手とはなりえなくなっている中、着実に各社は生産・輸送拠点を東北地方や日本海側に移しつつある。そうした「内日本」にこそ、次世代エネルギーがあるというのだ。ユーラシア大陸を相手に大規模な輸送路が築き上げられようとしている今、実は「内日本」こそがこれからは熱いというべきなのではないだろうか。
“なかったこと”にされた?日本の潜在能力
こうした論点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その背景にありながら私たち=日本の個人投資家が知ることのなかった歴史上の“真実”について、私は、4月4、5日に東京・横浜で、4月18、19日に大阪・名古屋でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナーで詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。
さて、上のように考えてみると、実に「内日本」には謎が満ちている。先ほどご紹介したロックフェラーの「油田」は本当に無かったのだろうか。いや、もっといえば、現代の技術をもってしても、どうにもこうにも本当に採掘が不可能なものなのであろうか。そうではなくて、むしろ石油に限らず、「内日本」に日本人が気づいていない潜在能力を見出したからこそ、あえて“なかったこと”にしたのではなかろうか。素人目にも、どうしても納得がいかない歴史なのである。
ちなみにこれもまた余り知られていない事実なのであるが、米国勢は1945年から7年間行ったGHQによる占領統治の過程で、あらためて徹底した油田調査を日本で実施している。その際にも、「内日本」は正に研究対象とされており、「十二分に可能性あり」とのお墨付きを得ているのである。ここからもまた、インターナショナル石油の撤退が単なる“撤退”ではなかった可能性をうかがい知ることが出来るのだ。
一方、戦後日本で活躍した人物たちを見ると不思議に「内日本」出身の人物が多い。政界、財界、メディア界と珠玉のごとくの人材が「内日本」からは輩出されている。これを単に偶然といってよいのかどうか。あるいは計り知れないほど巨大な何らかの意図がそこには働いてきたのか。
豊富なエネルギー。輸送路という意味で地理的に枢要な地位。そして、戦後日本に圧倒的な影響力を与えてきた人脈――日本人が気づかぬ間に「内日本」が熱くなってから初めて、時を超えた巨大な仕掛けの存在に、私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンは気づくことになるのかもしれない。
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
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