投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
ドバイ・ショックとは一体何だったのか?
日本マーケットの“暴騰”に向け仕掛けられたものとは?
11月も末日になり、いよいよ今月(12月)に入ってからの日本マーケットは、それまでとは一転、“暴騰”する展開となっている。そしてついに、去る12月4日には平均株価ベースで「10,000円」を越えた。
その直前、欧州勢を中心に“越境する投資主体”たちはこぞって次のように叫んでいた。
「日本が一番、デフォルト(国家債務不履行)になる可能性が高い。あの巨額の財政赤字は西側先進国ではあり得ないほどのレヴェルだ」
「デフレが一番問題だ。しかし日本政府がそれを抑えようにも、景気回復策のために発行する赤字国債の買い手がいない。超低金利政策のおかげで日本人は貯蓄しなくなっており、金融機関の金庫は減るばかりだからだ」
「明るい将来が日本を待っていることなどあり得ない。むしろ財政破たんした日本から押し寄せる波がアジア、そして世界全体へと及ぶ可能性の方が高い。困ったことだ」
しかし、現実にはどうなったのか。――ここに来ての突然の“株高”である。すると日本が先行する形での“景気後退”を喧伝(けんでん)するこれら“越境する投資主体”たちの声は一気に止んでしまったように見受けられる。
これで読者の方々もあらためてお分かり頂けたのではないかと思う。金融資本主義とはとどのつまり、“情報リテラシー”の優劣を競うものなのだ。「もっともらしい論理」が横行する中、マネーの“潮目”をしっかりと見極める能力を持ち、かつこれに基づいて具体的な行動を的確にとっていける者だけが生き残る。読者のみなさんが今回の“潮目”の中で「高い授業料」を再び払うことになっていないよう祈るばかりである。
ドバイ・ショックで漁夫の利を得たのは誰か?
そのような中、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、ここにきて一つの気になる情報が飛び込んできた。
上記の“日本株暴騰”局面の直前に発生したドバイ・ショック。このドバイ・ショックを契機として、米系“越境する投資主体”の雄はどうしたことか、「だから、今こそイスラエル・マーケットこそ買いだ」と叫び始めたのだというのである(1日付 米国ザ・メディア・ライン参照)。曰く、「イスラエル勢は半年前の段階で既に景気後退局面を脱している。危ない湾岸諸国への投資など止めて、ここはひとまず、よりマシなマーケットであるイスラエルへ逃げ込むべきだ」というのである。正にイスラエル勢にしてみれば“漁夫の利”とでもいうべき展開だろう。
しかし、ここでこうしたストーリーが単純に経済の論理だけで展開されているのではないかと考えると、事の本質を見失いかねない。なぜなら、不思議なことに今回のドバイ・ショックが発生する直前に、イスラエル勢は問題視されているヨルダン川西岸地域への入植を「10ヶ月間停止」するとの決定を行ったばかりだからだ。それ自体は中東和平へとつながる決断であるので、歓迎すべきことである。
だがこの決定、考えれば考えるほど“不思議なこと”だらけだ。そもそもなぜ1年や半年でもなく「10ヶ月間」なのか。より問題視されている東エルサレムではなく、ヨルダン川西岸地区だけなのか。そして――「なぜ、このタイミングなのか?」
現在進行中の金融メルトダウンを巡る一つの帰結が「イスラエル的なるものの粛清」であることは既に明らかとなる展開が続いているだけに、イスラエル勢としては蓄えが必要な状況にあることは間違いない。そうだとすると、“ドバイ・ショック”そのものの仕掛け人ではなくとも、イスラエル系インテリジェンス機関がその発生を何らかの形で事前に察知していたならば一体どう動くのか。米系“越境する投資主体”の雄との結託をも念頭に入れつつ、事態を良く振り返ってみる必要がありそうだ。
これから何が起きるのか?
この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で日本マーケットを取り囲む米欧勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて、私は12月19日に大阪で開催する「IISIAスタート・セミナー」(無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。また、来年(2010年)1月23日には今回で3回目となる恒例の「IISIA年頭講演会」を1,000名規模で東京・杉並にて開催する予定である。既に600名近い方々のご応募を頂いている。是非、お早目にお申し込み頂ければと思う。
さて、今後あり得べき事態について少々、私自身の考えを書いておくことにしよう。――「ドバイは所詮、小国。世界経済全体をさらに揺るがすことなどあり得ない」そうした声がここに来て駆け巡っている感があるが、果たして本当に安心して良いかは疑問だ。
なぜなら、問題となっているドバイ系不動産銀行の債務を巡る償還期限が来る今月15日に到来するからである。もちろん、関係諸国政府や“越境する投資主体”たちは盛んに動きまわり、「問題の鎮静化」に向けた努力を重ねているかのように見える。しかし、所詮は「やる時はやる」「落とす時は落とす」のがマーケットにおける鉄則なのだ。そのことが多数の利益に叶うのであれば、容赦なくマーケットは“暴落”への道を辿ることであろう。
それでは、そうした事態を望んでいるとすれば一体誰なのか?――私はこの問いに対する答えを出すにあたってカギを握るのは欧州勢だと考えている。なぜならば、ドバイを含むアラブ首長国連邦(UAE)勢に対する貸付額の実に4分の3が欧州勢によるものだからだ。同時に欧州勢はドル安誘導による米国勢の盛んな近隣窮乏策によって苦しみ続けている。ユーロ安への“演出”はしたがって欧州勢の利益に叶うものなのであって、そのためには欧州勢が大量に「貸し込んでいる場所」での“爆裂”こそ、役に立つものと考えられる可能性は十二分にあるのだ。
正に国際金融情勢は複雑怪奇。しかし、大切なのは「よりマシなマーケット」として私たちの国・日本のマーケットがそこでくっきりと浮かび上がってくることだと私は考えている。正に最後に残された黄金の国・ジパングである日本。そのことに気付いた私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンによる「より良き世界、幸福な地球」に向けた“思想と行動”が今こそ求められている。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
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