『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

誰が金融メルトダウンの“落とし前”をつけるのか?

緩慢な“出口戦略バブル”は「振るい落とし」のため

米欧勢では相変わらず“出口戦略バブル”とでもいうべき状況が続く一方、日本マーケットではさえない展開が続いている。我が研究所のクライアント各位の御様子を拝見していると、「これは必ず大恐慌の時と同じようなことになる。“大底”が来たらば、その直後から大暴騰。ここで資産形成をしないで何とする!」と最初は気張られていたものの、余りにも緩慢な展開を前に率直に言って“金融メルトダウン疲れ”を覚えられていることは明らかだ。そして一人、また一人と金融マーケットの最前線を離脱されていらっしゃるように見受けられる。


しかし、ここで是非あらためて立ち止まり、考えて頂きたいのである。騰がるにせよ、暴落するにせよ、なぜ今現在の動きが「余りにも緩慢」な形で“演出”されているのか?――率直に言って、これこそが振るい落としに他ならない。「売り(ショートポジション)」で勝負をかけてきた個人投資家たちは、ここに来て高まるばかりの“出口戦略バブル”による上げ局面で、息絶え絶えとなっている。


振るい落とされているのは、何も個人投資家だけではない。量的緩和、すなわち紙幣を擦り増して市中銀行へと渡すオペレーションを中央銀行が進めているにせよ、「貸倒リスク」があるため、企業へそのマネーはほとんど届いていない。金融メルトダウンの当初、「これこそ、大企業を出し抜く天佑だ」と息巻いていた中小企業たちは、今度は内部留保の底をつかせ始めている。事態が長引けば長引くほど、ショートする中小企業は増えていく。正にアウスレーゼ(Auslese「淘汰」)そのものなのである。

いきなり“謝罪”した米系“越境する投資主体”の雄

そのような中、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、ここにきて1つの気になる情報が飛び込んできた。米系“越境する投資主体”の雄であるゴールドマンサックス社のブランクファインCEOが、いきなり公衆の面前で「謝罪した」というのである(18日付 独国南ドイツ新聞参照)。しかも「我々は誤った金融商品に手を染めていた」とまで述べたというのであるから驚きだ。そのあまりに率直な“謝罪”について日本で大手メディアが伝えることはなかったものの、マーケットの“猛者”たちの間で静かな波紋を呼びつつある。


実はこの話には伏線がある。――11月に入って、米系有力地方紙であるマクラッチー紙がいきなりゴールドマンサックス社を“糾弾”する特集を掲載。民主党勢に近いといわれる有力紙による突然の攻撃であるだけに、「これから何かが起きるかもしれない」とざわめきが生じつつあったのである。そして、ここに来て米系“越境する投資主体”の雄を象徴する人物による「謝罪」である。金融メルトダウンの“最終局面”においては、それなりのスケープゴートが必要だ。昨年(2008年)秋の情景を思い出して頂きたい。米系“越境する投資主体”の雄であるリーマン・ブラザーズ社が文字通り「スケープゴート」とされ、米議会公聴会の場で“八つ裂き”にされたのであった。


同様にいよいよ“最終局面”に向けたスケープゴート探しが始まっているのだとすれば、そのことは逆に“最終局面”が着実に近づいていることを指し示すと考えられなくもない。したがって、春先から始まった“出口戦略バブル”に酔いしれている暇など私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンには無いのであって、今まさに「その時」に備えることこそ急務となっている。

2010年、一体何が起きるのか?

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で日本マーケットを取り囲む米欧勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は、12月19日に大阪で開催する「IISIAスタート・セミナー」(無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。また、来年(2010年)1月23日には今回で3回目となる恒例の「IISIA年頭講演会」を1,000名規模で東京・杉並にて開催する予定である。こちらも是非ご参加頂ければと思う。


さて、話を米系“越境する投資主体”の雄に戻す。――実はこうしたブランクファインCEOによる“謝罪”と相前後して、ゴールドマンサックス社は「伝説の投資家」ウォーレン・バフェット氏と共に米国における中小企業への“大規模な支援”を表明した。量的緩和にもかかわらずマネーの恩恵に預かることなく苦境に陥っている中小企業たちに対し、「罪滅ぼし」をしようということなのだろうか。


しかし、そうした「情」など本来はあり得ないのが、金融マーケットを疾走する“猛者”たちの間における隠れた常識だ。中小企業への「支援」をまたぞろ表明する米系“越境する投資主体”の雄の言動には、その次のフェーズに向けた隠されたアジェンダ(hidden agenda)があると見ておくべきだろう。それがなぜ、「中小企業支援」なのか?――これを読み解くカギを見つけた者だけが、金融メルトダウンの荒波を巧みに乗り越え、“次の時代”を生き残るパスポートを手にすることができるのかもしれない。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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狙われた日華の金塊

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