『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

米国勢が狙っているのは日本マーケットだ!!

緩まない対日監視の目

猫も杓子も「普天間」「FUTENMA」と騒ぐ日米関係。あたかも日米同盟は“危機”であり、鳩山由紀夫政権になって急に“自我”を取り戻した日本が、対米攻勢をかけ続けているかのような大手メディアによる報道が相次いでいる。


私のもとにも、ここに来て取材の申し込みが相次いで来ている。それ自体はありがたいことなのだが、しかし、そのたびに私は言うことにしているのだ。――「良いですか、普天間って本当に問題なのでしょうか?」


沖縄に暮らす方々、そしてこの基地移設によって経済的利益を得失する者は別とすると、とりわけ米国政界のメインストリームの中では「普天間のFの字も語られてはいない」というのが実態であるように見受けられる。それよりも、ホワイトハウスの主・オバマ大統領には気にするべきこと、為すべきことが山のようにある。「ヘルスケア改革」「金融規制改革」、そしてもっと頭の痛い問題としてかつては全く相手にもならなかったはずの“ペイリン前共和党副大統領候補”が支持率で強烈に追い上げていること等などだ。


日本ではこれほどまでに騒がれている「普天間」が、米国勢の大宗においてほとんど語られていないことの理由として、私はさらにもう一つのことを見逃してはならないと考えている。それは、日本勢と離反しつつあるように見える米国勢は、実のところ私たちの国・日本の、とりわけマーケットに対して引き続き強烈な関心を抱いているということだ。日本の大手メディアたちは例によってそれとして語らなかったことなのであるが、去る11月中旬に行われたオバマ大統領による訪日も、同大統領の言葉を借りるならば“市場開放”を求めるためのものだったのである。しかし、市場開放を求めるためには、からめ手としてそれ以外の何らかの“理由”で日本勢を追い詰める必要がある。なぜなら、それによってもう一つのカードを得ることが出来、最終的に“市場開放”という本当の獲物を得る際の武器にすることができるからだ。


「本当の獲物である日本マーケット」――だからこそ、ここに来て米系インテリジェンス機関は日本勢に対する公開情報インテリジェンス(OSINT)を通じた監視の目を厳しくしつつあるようだ。


例えば先日、米国有数の大学に付設されている日本研究センターで東京の米国大使館での勤務経験のある“客員研究員”による発表が行われた。タイトルはズバリ、「米国にとって好ましからぬ日本の言論人」。そしてその場では3名の「ペルソナ・ノン・グラータ(=好ましからざる人物)」たちの名が挙げられたのだという。経営コンサルタントで知られるO氏、財団系シンクタンクを率いていたことで知られるK氏。そして何と、“最後に選ばれた”のは私・原田武夫だったのだと聞く。『計画破産国家 アメリカの罠』――海の向こうの彼らにとってはかなり“強烈なインパクト”だったようだ。

「米ドル高」への転換という“潮目”?

そのような中、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、ここにきて一つの気になる情報が飛び込んできた。


米国政界でここに来てにわかに問題とされているのが、連邦レヴェルで許されている「財政赤字の上限枠」だ。今年(2009年)について連邦議会上院が認めた上限枠が12.1兆ドルであるのに対し、去る9日の段階で12.08兆ドルにまで財政赤字が積み上がっているのだという。こうした事態を受けて今、徐々に騒ぎになりつつあるのだが、何を思ったのかペロシ連邦議会下院議長(民主党)が「クリスマス休暇に入る前に、連邦議会下院としてはこの上限枠引き上げに応じる考えだ」と発言したというのである(10日付 米国ザ・ヒル・ドット・コム参照)。


もちろん財政赤字が積み上がってしまうことそれ自体は、最終的に「これほど莫大な債務を支払えるのか」という疑念を惹起(じゃっき)し、やがてはデフォルト(国家債務不履行)へとつらなってしまう危険性がある。米国債を担保にしながら発行されているのが米ドルである以上、そうした危険性が人々によって口に出された途端に、米ドルは大暴落してしまうことだろう。


しかし、かといってこの“上限枠”を引き上げなければ、既に発行した米国債に関する支払いをこれから発行する米国債によって得るカネで賄(まかな)うという意味での「自転車操業」すらできなくなってしまう可能性がある。このことは端的に言えば米国財政の破たん=デフォルト(国家債務不履行)を意味する。


したがって、上記で紹介したペロシ議長による発言のとおり、ここで連邦議会下院、ひいては連邦議会全体として「上限枠の引き上げ」に応じるならば、“長期的”にはともかく、少なくとも“短期的”にデフォルト(国家債務不履行)という「最悪な事態」は避けられたと評価され得るのだ。そして、そのことは米国債への“再評価”へと連なり、やがては米ドル高への“再評価”にも連なっていくことであろう。その結果、「米ドル高」へとマーケットの“潮目”は転換していくこととなる。


もちろん、これはあくまでも“短期的”な毒消しに過ぎないことに留意すべきだろう。雪だるま式に増える米国勢の債務は、もはや「最終局面」は避けられないというのがマーケットの“猛者”たちの一致した認識だ。しかも、本来であれば今すぐこなすべき課題を“後回し”にすることのツケは必ずや大きい。そのことを私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンは今から肝に銘じておくべきなのだ。

そして蘇る日本マーケット、追放される自称“反米論者”たち

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で日本マーケットを取り囲む米欧勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は、1月9日に東京で、30日に大阪で、31日に名古屋でそれぞれ開催する「IISIAスクール」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。また、来年(2010年)1月23日には今回で3回目となる恒例の「IISIA年頭講演会」を1,000名規模で東京・杉並にて開催する予定である。既に600名近い方々にご応募頂いている。是非、お早目にお申し込み頂ければと思う。


ちなみに米ドル高への転換という“潮目”は、これまで米ドル安と連動して語られてきたもの全てに対して「反転」という“潮目”をもたらすことであろう。「米ドル安だからこそ、安定的な資産である金(ゴールド)だ」「米ドル安は円高、だから日本株安だ」といった議論は、一気に反転することは間違いない。その結果、やはり“最後に選ばれたのは日本であった”ということが明らかになる可能性がますます高まっている。


そして最後に一言。――先ほどの米国有数の日本研究センターにおける“客員研究員”の口からは、これまでやれ「米ドルはすぐに崩壊する」「金(ゴールド)でも買っておけばよい」などと“喧伝”しまくってきた、曰く憂国の経済評論家氏たちの名前はついぞ出なかったとのことだ。このことは、これらの紳士たちによる“表見的反米論”が米国勢にとって余りにも相手にできないレヴェルだということを意思表示しているのか。はたまた、時に「大学教授」といった仮面をかぶった経済評論家氏たちこそ、実は米国勢と密やかな盟約を結び、私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンたちを陥れようとする張本人なのか。既に始まっている“大転換の時代”に、そのどちらかが明らかになることは間違いない。私はそう思っている。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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狙われた日華の金塊

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