デイトレーダーは「バカで無責任」?自分に合った投資法を見つけるには
経産省事務次官の「デイトレーダーはバカ」発言
北畑氏は1月25日に行われた講演会で、株の短期売買を繰り返すデイトレーダーや投資ファンドを、「バカで強欲で無責任で脅かす人」などと批判したのです。「本当は競輪場か競馬場に行っていた人が、パソコンを使って証券市場に来た。最も堕落した株主の典型だ。バカで浮気で無責任だから、議決権を与える必要はない」とも述べており、ここまでくれば罵倒といってもいいでしょう。
発言が明らかになった後、同省の甘利明大臣は、北畑氏から謝罪があったことを明らかにし、「講演会を盛り上げようとして、誤解を生むような表現を使ったようだ」と述べました
残念ながら、投資家の中には自分と異なる投資手法を否定する傾向が見られます。ファンダメンタルズを調べて株価を判断する投資家は、デイトレードを否定しがち。逆もまた然り、です。
しかし、もしも市場参加者が全て同じ考え方だったらどうでしょう。分かりやすくいえば、あなたがある銘柄を売りたい(もしくは買いたい)と思っても、市場に逆の考えを持つ参加者がいなければその取引は成立しません。
デイトレーダーをはじめとする短期の投資家がいるからこそ、市場に流動性が生まれます。流動性のない硬直した市場など、誰も見向きしないでしょう。企業を応援するつもりで長期保有する株主から、目先の利益を目的に短期で売買する投資家まで、参加者の層が厚くなって初めて市場の透明性が増すのです。
投資家の日本市場離れが懸念されているこのタイミングで、魅力的な市場環境を作るべき行政のトップがこのような発言をしたことは残念としか言えません。【ポイント1】
デイトレードは本当に悪なのか?
とはいえ、北畑氏ほどはっきりとした批判でなくとも、短期で売買し儲けるデイトレードを悪とする空気があることも事実です。
私自身はこのコーナーも含めてデイトレードを積極的に勧めることはしていません。しかし、今日買って明日売って利益が出せるのであれば、そんな素敵な話はないと思っています。まさに投資の理想といってもいいかもしれません。
しかし、私は自分の経験から、デイトレードは長続きしないと感じ、一方で会社を調べ分析し投資することが自分に合っていると気付いたのです。それはデイトレードという手法を否定するものではなく、あくまで「自分の経験」からそれを学んだということです。
私が初めて株式投資を行ったのは約10年前の学生時代でした。チャートブックとにらめっこして、いかに短期で儲けるかばかりを考える、いわばデイトレーダーでした。
実際、途中まではそれで上手くいきました。60万円の投資資金を200万円まで増やすことができたのです。しかし、その資金で「日住金」という会社の株を買ったところ同社は倒産し、投資資金は底をついてしまいました。その経験から、会社を調べることの大切さを学び、今に至ります。
投資を行っている以上、短期で儲けたいというのは自然な感情です。私の場合は、それよりも会社を調べ分析して投資するほうが自分に合っていると思っただけなのです。その手法が万人に当てはまるとは思っていません。ましてや、デイトレーダーを「バカ、無責任」などと批判するつもりもありません。【ポイント2】
自分に合った投資手法を見つけるには
残念ながら投資には必勝法は存在しません。必ず損失という実害を経験することでしょう。だからこそ、短期で儲けているという話を聞くと、うらやましいと感じるとともに妬みが生まれるのかもしれません。
忘れがちですが、あなたがある会社の株を1,000円で買ったとすると、全く同時に1,000円でその株を売った人物がいます。つまり、あなたが欲しいと思った株を、何らかの理由で売りたいと思った人物がいるのです。
自分の希望に合った取引が成立するわけですから、それはそれでよいのですが、よく考えると、自分の「買う」という意思決定を真っ向から否定する人物が存在するということでもあります。どちらが正しいかは、後々にならないと分かりませんが、自分を否定された不安感を払拭するため、とりあえず自分と考えの違う相手を否定したくなる気持ちも分からないではないです。
しかし、否定しても何も始まりません。先に述べたようにさまざまな考え方がある多様性は、市場の健全化に欠かせないのです。であれば、冷静に、自分に合った投資手法を探し、それを進化させていくしかないのです。
私は、ファンダメンタルズと呼ばれる会社を調べる手法が自分に合っていると思いますが、世の中にはデイトレードやチャート分析が合う投資家もいるでしょう。もっといえば、投資ではなく投機に向いている人もいます。
自分が何に向いているか分からないという人は、まずは小額で色々と試してみることです。一般的に語られる投資手法をほぼ全て経験したからこそ、私は自分に向いている手法を見つけることができたのです。【ポイント3】
- 【ポイント1】
- 官僚がこういった発言をすること自体、日本の証券市場がいかに幼稚か、ということを世界に発信してしまったことになります。投資ほど机上と実践とが異なる場はありません。諸外国が政府系投資ファンドを創設し、世界中で投資をする時代になってきたというのに、日本はお寒い限りです。
- 【ポイント2】
- 大事なことなので繰り返しますが、短期で儲けることは決して悪いことではありません。株式投資の醍醐味でもあります。そのため、私はいつもお金を短期用と長期用と2種類に分けてみたらどうか、と提案しています。純粋に短期で儲けることを狙う資金と、株主としてじっくり投資をした会社と付き合うための資金を用意するのです。配分は、投資家各人が自分にあったように決めればいいでしょう。
- 【ポイント3】
- 投資は結局ひとりで行うものです。そのため、パフォーマンスや市場予測が実際と異なってしますと迷ってしまうでしょう。だからこそ、お金を色分けし、いろいろと実験してみることが大事です。その中で自分という人間がどんな特徴を持っているか知れば、ひとりで行う投資に腰が入ってくると思うのです。
やっぱり私は会社を調べて分析して、ある会社に興味を持ったら、競合も調べ、取引先も調べ、関連する会社も調べ…という方法が好きなんですね。そして、結果としてその手法が一番パフォーマンスを取れるという実感もあります。いずれにしても、自分に合った投資を見つけてしまえば、後はその手法に磨きをかけていくだけです。(木下)
トラックバックはまだありません。
- この記事に対するTrackBackのURL
コメントはまだありません。
木下晃伸(きのしたてるのぶ)
経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。
投資脳のつくり方
マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。