原油高騰が追い風?“資源大国”カナダの投資魅力とは
これまで何度かアジア諸国の現地リポートをお届けしましたが、今回は6月15日から20日(金)にかけて訪問した北米の国、カナダについてお届けしたいと思います。
北米といえばまず思いつくのがアメリカ合衆国。世界のマーケットに影響を与え、東京市場も前日のニューヨーク市場の動向に左右されることが少なくありません。北米を訪問するならなぜアメリカではないのか?そう思われる方も少なくないのではないでしょうか。
確かに、投資をするにあたってアメリカは非常に重要です。しかし、そのアメリカの陰に隠れがちなカナダも決して無視してよい存在ではなく、注目すべき国だといえるのです。
「資源大国」としてのカナダ
なぜカナダは注目すべき国なのでしょうか。答えは簡単、「資源大国」だからです。カナダの原油確認埋蔵量は、サウジアラビアに次ぎ世界第2位ですし、原子力発電に不可欠なウランに至っては、世界第1位の生産量を誇っています。
投資をする上で、こうした資源国を無視してよいはずがありません。
事実、このところの資源高を背景に、カナダのトロント証券取引所の株価は好調を維持しています。
ではさっそく「資源」を切り口に、私が現地で撮影した写真を交えながら、カナダという国をご紹介していきましょう。
キーワードは「オイルサンド」
カナダといえば、広大な土地を思い浮かべる方も多いでしょう。実際、訪問してみて、そのことを実感しました。
とにかく広大、空が広いです。
しかし、都心のオフィス街の様子はまさに近代国家です。
トロントの高層ビル群
雄大な自然を持ちながらも、近代的な都市国家としての側面も持つカナダ。その発展の背景を探るキーワードの1つが「オイルサンド」です。
オイルサンドとは、鉱物油分を含む砂岩のことで、そのほとんどがカナダ西部のアルバータ州に存在しています。総埋蔵量は1.7〜2.5兆バレルと推定されています。アルバータ州は日本の2倍弱の面積があり、オイルサンド採掘地の面積だけでも、日本の総面積の3分の1強あるといいます。
オイルサンド集積地アルバータ州フォートマクマレー
オイルサンド採掘地
たしかに膨大な埋蔵量があるのですが、オイルサンドには欠点があります。それは「コストが高い」ということです。
オイルサンドから抽出されるビチューメンとよばれる超重質油は、通常の原油と比較すると粘性が高く、性状が劣るため、通常の原油用製油所では精製できません。そのため、専用の製油所、もしくは合成原油に改質して出荷するための設備(アップグレーダー)が必要になるのです。
しかし、オイルサンド採掘大手のUTSエナジーに取材をしたところ、そのコストは「WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)でいえば、1バレル60ドル程度」とのこと。現在、原油価格は1バレル140ドルをうかがう展開ですので、その程度のコストであれば十分採算が合うといえるでしょう。
取材にご対応いただいたUTSエナジーCEOウィル・ローチ氏
カナダへの投資は魅力的?
では、このオイルサンド関連銘柄をはじめとしたカナダへの投資は魅力的なものなのでしょうか。トロント証券取引所に上場するオイルサンド銘柄「Canadian Oil Sands Trust (TSE:COS.UN)」の株価を見てみてください。
グラフ上にある「zoom」から「1y(1年)」、「5y(5年)」、「10y(10年)」を選択すると、その勢いがよりはっきり分かるでしょう。
新興国に比べ、カナダの政情は比較的安定しており、かつこうした驚異的な勢いを感じさせる銘柄があるのであれば、「ぜひ投資したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
ただ残念ながら、日本の投資家がカナダ株へ投資する手段は非常に限られています。特に個別銘柄は難しく、上記の Canadian Oil Sands Trust への投資も実質的には無理、といえます。
しかし、投資信託の形であれば可能です。例えば、「AGF-FC カナダ資源株ファンド(ファンドクリエーション投信投資顧問)」は、数少ないカナダへの投資アプローチと言えます。
「カナダへの投資」といって、メイプルリーフ金貨しか思い浮かばないのではちょっと寂しいですよね。今回のリポートをきっかけに、さらに投資対象としてのカナダに興味を持っていただけたら幸いです。
そして何より、カナダ株へのアプローチが気軽に行えるインフラが整備されていくことを願いたいと思います。
- それにしても、カナダは広かった…。都市間の移動の多くは飛行機であり、滞在していた1週間のうち7度も飛行機に乗りました。総飛行時間は40時間を超えていると思います。日本の27倍もの土地に眠る宝の鉱脈が、カナダをより強大な国にしていくのでしょう。楽しみです。(木下)
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木下晃伸(きのしたてるのぶ)
経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。
投資脳のつくり方
マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。