投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
北朝鮮は世界最強のファンドビジネス国家?
今頃になって騒ぎ立てる日本のメディア
8日から中国・北京で行われた北朝鮮を巡る六カ国協議。2003年から延々と行われてきたこの協議も最大の山場を迎えた。いや、日本にとっては山場どころか、最大のピンチといった方がいいのかもしれない。なぜなら、とある重大事がはっきりとしてきたからだ。
「封じ込まれているのは北朝鮮ではなく、日本ではないのか」
あれだけ北朝鮮とはサシで話し合いはしないと言っていた米国が、ドイツ・ベルリンで米朝協議を行い、交渉当事者たちがなにやら怪しげな笑みを浮かべた後に行われたのが今回の六カ国協議である。蚊帳の外に置かれた日本政府は、一体何が起きているのか分からないというのが正直なところだろう。
しかし、今回の六カ国協議の直前になって、日本のメディアがけたたましく騒ぎはじめた話がある。それは、よりによって北朝鮮の豊富な鉱山利権を巡って、英国が深く関与する形でファンドが設定されているというのだ。しかも、それは一般に売られており、インターネットで広告すら出されているのだという。いつもは「核兵器の脅威だ!」「拉致問題だ!」としか騒がない初老のコメンテーターたちが、訳知り顔で付け加える。「要するに安い内に買っておいて、米朝が仲良くなって値上がりしたら売り払うということですよ」。
今になって「したり顔」でコメントする彼らの似非コメンテーターぶりに、正直、怒りを超えて、呆れてしまった。なぜなら、北朝鮮問題の本質は、存在すら確認されていない核兵器ではなく、実は鉱山利権を巡る争いであることは、一昨年4月に出した拙著『北朝鮮外交の真実』でも既に明らかにしたとおりだからである。そうした真実をこれまで語ることなく、今頃になって「したり顔」で騒ぎ立てる日本のメディアの罪は重い。
ドイツとスイスの新聞だけが明かす真実
豊富な鉱物資源を抱える北朝鮮は、実は世界でも有数の「ファンドビジネス国家」でもあるのだ。英国、そしてスイスといった欧州諸国、あるいは中国を経由して、それに目をつけた資金が既に大量に流れ込み、鉱山開発が着々と進められている。その一方で、これからは資源、とりわけ鉱物資源の時代である。特に、来年の北京オリンピックを控えた中国は、大量の金属、石炭、そしてウランや金を必要としている。隣国でこれだけ巨大な需要が生まれるのだから、北朝鮮は笑いが止まらないだろう。そこにファンドを設定した欧州各国の投資家たちも、北朝鮮と同じ思いに違いない。しかし、どうやら米国はこの利権にありつき損ねたようなのだ。だからこそ、何かというと北朝鮮を悪者扱いし、挙句の果てには経済・金融制裁まで課してきた。そして、「米ドルの偽造疑惑」まで持ち出しては北朝鮮をたたき続けている。
しかし、今年の1月7日。メールマガジン『元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る』でも記したとおり、世界中の北朝鮮ウォッチャーたちを大いに驚かせる報道が、ドイツの最有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」に掲載された。それは何と、「ニセ米ドル」は米国自身がアフリカの独裁政権を維持するために刷ったものであり、これが巡りめぐって北朝鮮に渡されたに過ぎないというのである。同じような内容はスイスでも最有力紙「ノイエ・チューリッヒャー・ツァィトゥング」が昨年11月19日付で報じている。
これらは、日本の「似非コメンテーター」たちが話すのとは訳が違う。なぜなら、米ドルの輪転機をつくっているのはドイツであり、そのインクはスイス製だからである。したがって、北朝鮮に関する米国の主張や政策と真っ向から反対するこれらの記事にはすさまじい重みがある。それなのに、日本の大手メディアは一切このことを報じてはいない。
世界をウォッチする個人投資家だけが生き残る
賢明な読者は既にお分かりであろうが、金融資本主義のイロハを知っていれば、ここで一体何が起きているのかを想像するのはそれほど難しいことではない。ドイツやスイスの激し方からいって、要するに彼らが北朝鮮で展開するファンドビジネスの取り分に米国が手を出してきたのであろう。だからこそ、米国と「ガチンコ勝負」に臨んだというわけだ。
その結果、どうなったのか。―――1月16日、ドイツのベルリンで米朝協議が行われた。ドイツのお膝元で米国は北朝鮮とあえて話し合いをもったのである。要するにブッシュ大統領は完全に「白旗」をドイツに振ったのである。その後に行われた今回の六カ国協議で話し合われる「本当の問題」が一体何であるのかは、この段階で既に明らかだったといえよう。
それなのに、日本の大手メディアやそこに巣食う言論人たちは、「北朝鮮問題を経済問題で片付けるのはけしからん」などと訳の分からない主張を繰り返し、無策な安倍晋三総理もその尻馬に乗ってしまっている。拉致問題の解決のためには、それこそ日本の国富で北朝鮮ファンドを買占め、胴元である北朝鮮にいうことを聞かせるべしといった、金融資本主義の鉄則にかなった外交を主張する政治家・外交官はこの国に全く見当たらない。
日本の個人投資家が先読みをし、マーケットで生き残るためにこそ、世界のメディアをウォッチし、分析し続ける必要があることを、この事例ははっきりと示しているといえるだろう。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
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