『国際政治経済塾』
投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

日本の会社を狙うリアル・ロシア!拉致問題に触れた彼らの真意とは?

忍び寄るロシアの足音、不気味な米ロの芝居

13日まで中国・北京で行われた北朝鮮に関する6カ国協議をウォッチしていて、どうしても気になることがあった。それは、ロシア代表・ロシュコフ大使の言動だ。


日本にとって北朝鮮問題といえば、何といっても「拉致問題」。しかし、各国ともにこの問題を真正面から取り上げる気配すらないのが現状だ。ところがロシュコフ大使はといえば、どういうわけか難航する協議の合間を縫って、日本からの記者団に対し、「日本人拉致問題の解決は極めて重要だ」とあえていってみせたようだ。当然、北京でネタに飢えている記者団たちはこうしたロシュコフ大使を囲んだ記者懇談(通称「ロシュコフ懇」)でのひと言を大いに書き立てる。こうした報道を見た日本人の多くの読者が、ロシアに恩を感じたのではないだろうか。


しかし、メールマガジン『元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る』の編集人として、世界中のメディアを個人投資家の目線でウォッチしている私としては、どうしてもこうしたロシアの対応が解せなかった。―――なぜなら、ほぼ同じ時期(2月9・10日)、地球の裏側であるドイツ・ミュンヘンでは恒例の安全保障会議に、プーチン大統領自らが出席し、米国に対する歯に衣を着せない批判を繰り広げていたからだ。それなのに、北京では、一向にそうした米ロ間のきしみは聞こえてこない。それどころか、「拉致」という重大問題を抱えて立ち往生していた日本に助け舟を出すほどの余裕を見せるくらいだ。

「リアル・ロシア」が日本を狙う

2月15日に上梓した拙著『「日本封じ込め」の時代』で記したとおり、今回の6カ国協議においては、エネルギー支援をめぐって、北朝鮮どころか、米国をはじめとする各国からもよってたかって封じ込められてしまった日本。そんな日本に対して「助け舟」を出す優しい顔のロシアが、実は今の世界を覆う金融資本主義に最も適応した国家であり、一方では原油利権をめぐって米国と渡り合い、他方では欧州各国で次々にM&Aを繰り返しては、各国の国策企業まで飲み込もうとしているという驚愕の事実を読者はご存知であろうか?こうしたロシアの姿を現実のロシア、「リアル・ロシア」と呼ぶことにしよう。


ロシアは世界最大の産油国である。そしてその有り余るオイル・マネーを用いて、欧州市場を席巻しようとしている。ドイツでは日本のNTTに相当するドイツ・テレコムの子会社をロシア系ファンドが買収しようとし、ドイツ政府の情報機関より待ったがかかったほどの騒ぎとなっている。そのためであろうか、たとえば1月17日付のモスニュース・ドット・コムが伝えているとおり、ロシア最大のエネルギー企業であるガスプロムは、巨額の広告宣伝費を用いて、欧州諸国における自社のM&Aによって生じる「反ロシア感情」の緩和に乗り出したのだという。


それぐらい勢いのあるロシアとの関係を、米国が綿密な計算の下で作り上げていないはずもない。2月9日の同じくモスニュース・ドット・コムでは、モスクワに駐在する米国大使がガスプロムのCEOと会談を行ったことを同社自身が公表したことを明らかにした。その時の主たる話題が、ロシアにおける原油開発であったことはいうまでもない。しかし、この時期はミュンヘンでプーチン大統領が正に口角泡を飛ばして対米批判を繰り返していた時なのである。「表面的には喧嘩をし、裏ではしっかりと握り合う」という米ロ間の隠微な関係がここに現れているのだ。

時代錯誤な「ロシア専門家」はもう要らない!

しかし、日本ではそうしたリアル・ロシアの姿は全く報じられることがない。大手メディアを見ると出てくるのは、旧ソ連時代から関わっているという自称「ロシア専門家」たちばかりだ。彼らの描くロシア像は旧態依然としており、ここでいうリアル・ロシアとは全くかけ離れている。


だが、賢い日本の個人投資家はこうした自称「ロシア専門家」たちに騙されてはいけない。有り余るオイル・マネーを用いて、欧州へ買収攻勢をかけ、そこでの反ロシア感情を抑えるために巨額の広告宣伝費をかけるというのが今のロシアのやり方なのだ。5月1日に三角合併の解禁を向かえ、外資による日本企業の買収が簡単になる日本マーケットを、リアル・ロシアが狙っていないはずもない。さらにいえば、買収した後に湧き上がる反ロシア感情をおさえるべく、当然、日本人の自称「ロシア専門家」や大手メディアへの工作も開始していることであろう。したがって、1月22〜24日にモスクワで行われた日ロ戦略対話は成功だったなど気軽に述べる「ロシア専門家」は怪しいのである。


多くの日本人が気付いていないが、日本企業を虎視眈々と狙っているのは米国だけではないのである。その筆頭が何とリアル・ロシアであることは、地球の裏側で何が起きているのかをウォッチすることですぐさま理解できるはずだ。そうした姿を弊研究所の公式ブログを通じても、引き続きリアルタイムでお届けしていきたいと思う。リアル・ロシアの実態を正しく把握し、彼らの機先を制して投資を行えば巨利を得るチャンスは十分にある。そのことを、1人でも多くの個人投資家の方々に気付いていただければと切に願っている。

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筆者プロフィール

名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表
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