『国際政治経済塾』
投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

マーケットの転換点になる4月6日米露首脳会談

「外交」が「マーケット」と密接不可分な理由

私が外務省を自主退職し、独立するきっかけとなったのは、当時から私のことを良く見ていてくれていたある身近な人物の一言だった。


「外交官の人って、マーケットですごく強いんじゃないかな」


その一言で私の頭には電光石火、あることがひらめいた。確かにマーケットで大きな揺れがある前には、その前触れが必ず外交の世界であるものだ。それはテロであったり、戦争であったりする場合もあるが、多くの場合はハイレベルな人物の外交使節団としての行き来だ。すると不思議にその直後、マーケットが揺れに揺れることがままあるのだ。


マーケットにおける鉄則の1つに、「ファンド・マネジャーは重要な投資の直前に、必ず現地を訪れる」というものがある。有名ファンドになればなるほどファンド・マネジャーは忙しく、1つ1つの投資案件に注意を払えなくなる。しかし“ここ一番”という時には、必ず自ら赴き、関係者と話をし、決断を下すものなのである。


ここに「マーケット」と「外交」が密接不可分な理由がある。なぜなら、ハイレベルなファンド・マネジャーは、多くの場合、公職も身にまとっているのだ。つまり、彼らが外国を訪れる場合、投資の前提として訪問することがバレないよう、なんらかの別の理由を探す。その典型が「外交使節団の一員として訪問する」という理由付けなのである。


外交では、国と国との間で頻繁に人のやりとりがされるものである。こうした理由を言われたら、誰も怪しまないであろう。だからこそ、私たち=日本の個人投資家は「外交の陰にマーケットの動きあり」といつも耳をそばだてておくべきなのである。


この関連で最近、とても気になる報道があった。4月6日にロシアのプーチン大統領が米国のブッシュ大統領とソチで首脳会談を行ったが、これに先立って3月27日にイタル・タス通信(ロシア)が会議開催決定について全世界に向けて配信したのである。

4月6日に行われた米露首脳会談

実は首脳会談で意味のある会話がなされることはあまりない。首脳同士がサシで話す時間は別として、基本的には衆人環視の環境で行われるからだ。そこでは非常にありきたりな会話が、あらかじめ決まったシナリオに則って繰り広げられ、記者団の前で両首脳の“親密さ”がアピールされて終わる。その意味では、税金を使った壮大な演劇であるといわれても仕方がないであろう。


しかし、ポイントは首脳自身の動きではないのだ。むしろ、これに随員としてついてくる人物が、マーケットでどういった流れの中にいるのかこそ問題なのである。また、首脳会談に先立って外交ルート、あるいは非公式ルートで行われる調整も重要である。とりわけ、米国やロシアといった「大国」ともなると、個別の問題で話し合うのではなく、むしろ全体をパッケージで話し合うことになる。これをパッケージ・ディール(包括的な交渉)という。その結果、「お前にはAをあげるから、こちらにはBをくれ」といったやり取りがなされることになる。


パッケージ・ディールという観点で今、米露間で最大の課題となっているのは中東である。ブッシュ政権は軍需関連企業からの強烈なロビイングで「弾道ミサイル防衛システム」を世界中に売る役回りを演じさせられている。そしてこのシステムを売るためには、弾道ミサイルを飛ばしてくる「悪役」が重要なのであって、それがイランというわけなのである。


ところがロシアはこれが気に入らない。なぜなら、イランにおける原子力ビジネスを展開してきたからだ。そのイランが「悪役」とされたのでは商売上がったりである。そこで米国とまずはガチンコ対決をせざるを得なくなる。そしてついには首脳会談が開催されることになったのだ。


もちろんそれ以外にもたくさんの問題がある。しかし、イランを筆頭に中東問題が米露間で決着した時、初めて中東情勢は落ち着くのであろう。マーケットとの関係では地政学リスクが低減することになるので、当然、原油価格は下落していく可能性が出てくる。その意味で、自らが“ビジネスマン”であるブッシュ大統領がプーチン大統領と会う中で、一体、どんなディールが行われたのかに注目すべきなのである。

その先にあるマーケットを読み解く

金融マーケットの騒乱の中で仕掛けられているこうした動きについて、私は4月20日に横浜、5月10・11日にさいたま・東京、5月23・24・25日に神戸・京都・静岡でそれぞれ開催する無料学習セミナーでじっくりお話できればと考えている。


日本の様子を振り返ってみると、福田康夫総理はやれ「決断力がない」、やれ「指導力がない」などと大手メディアで揶揄されている。しかし、果たしてそう単純に割り切れるものだろうか?


何せ、米露という超大国同士で決着がついてこなかったのである。世界第2位の経済大国とはいえ、軍事大国ではない日本がどんなにがんばったところで、現実的に考えると何も決まらなかったことであろう。そうである以上、外交にせよ、内政にせよ、今の段階で決めてしまうと、あとから米露の「手打ち」を受けて大変更を余儀なくされかねなかったのである。一国の宰相であれば、当然、そのことは分かっているはずであろう。したがって何も決めず、ひたすら時間稼ぎに走るという福田康夫スタイルはある意味、国際政治的な文脈からすれば理に適っていると見えなくもないのである。


ただ、日本の個人投資家という立場からするとやや訳が違う。騒乱するマーケットの中だからこそ、あらゆる者たちが憶測で動かざるを得なくなっているのが現状なのだ。だからこそ、少しでも「情報リテラシー」に秀でることで先読みをできる者が、利益をあげることができる。どこぞの宰相のように、安全パイをとってフリーズするというわけにはいかないのである。


米露が妥協することで、中東で地政学リスクは大幅に低減する。そうなれば、原油価格を押し上げている大きな理由の1つがなくなることであろう。その先で原油マーケットがどうなるか。今こそ私たち1人ひとりの「情報リテラシー」が問われている。



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2008年04月10日 13:29 | 米流時評
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筆者プロフィール

名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表
IISIA オーディオブック・第1巻「反外資の系譜」

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