『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

「不満」と「賞賛」。アメリカは安倍前首相をどう評価?

総理大臣「アベシンゾウ」の実像

北朝鮮による日本人拉致問題をきっかけに、最高権力の座に駆け上がった安倍晋三氏が総理大臣辞任を表明してから早2週間あまりが経つ。うつろな目で会見し、辞任を公表した安倍前首相に対する風当たりは依然として強い。


総理大臣「アベシンゾウ」が誕生した時、ある自民党所属衆院議員OBから次のような内幕を聞いたことがある。


「本当は別の人物を総理に、という声も党内で強かった。しかし、晋ちゃんが『どうしても父・晋太郎の無念を晴らしたい』と懇願した。そこまで言うなら、と皆で決めたんだ」


私自身、安倍前首相と至近距離にいたことがこれまで3回ある。1度目は00年夏に行われた九州・沖縄サミットの直後。当時、私はドイツ語担当の総理通訳。サミットに関与した政府高官たちと共に、森喜朗首相(当時)主催の打ち上げ会に参加した。テーブルにつくと、隣が安倍晋三官房副長官(当時)。ビールグラスにほとんど口をつけることなく、長州藩の歴史を語り続ける姿が印象的だった。


2度目は、04年11月の拉致問題に関する日朝協議(平壌)の直後。藪中三十二アジア大洋州局長(当時)とともに、自民党へ向かい、協議結果を安倍晋三幹事長代理に説明した。弁当をかきこみながら、偉ぶることなく話を聞く姿が印象的だった。


そして3度目。05年5月、テレビ朝日のサンデープロジェクトから、退職直後の私に「どうしても出てくれ」との声。スタジオに入ると、隣の席には安倍晋三氏がいた。この時もまた、偉ぶることなく安倍氏から軽く会釈してくれた。


そして今、07年9月。総理大臣「アベシンゾウ」について、日本の大手メディアはズタズタの評価を下している。日本人は、いつから敗軍の将にここまで無慈悲となったのか?

米国は一体どう見ているのか?

私が05年3月に外務省を自主退職する直前、東京にいる米国CIAのケースオフィサーから、しきりに尋ねられたことがある。


「で、シンゾウ・アベは何と言ってるんだい?彼は外務省に同意して動いているのか?」


何度も繰り返される同じ質問。ある時、私は気づいた。「安倍晋三という人は、ひょっとしたら米国にとって御しにくく、『危険人物』なのかもしれない」


今回の辞任劇をめぐっても、米国の態度は見極めにくい。全く異なった2つの評価が飛んでくる。


「安倍首相辞任:米国内で『対日不信感』広がる」と題する毎日新聞の9月13日付記事によれば、突然の辞任で対日不信が米国国内で高まっているのだという。それはそうだろう、「インド洋での海上給油支援の継続」を自ら「国際公約だ」と打ち上げておきながら、投げ出したのだから。


一方、「米国で評価高かった安倍首相『短期間に多くの業績残す』」と題する産経新聞記事(9月16日付)は全く逆。米国の有識者の声を引きながら、実は数多くの業績を残した安倍前首相のとなえるビジョンを、国民が理解できなかったのが原因だと語る。


「不信」と「評価」。「不満」と「賞賛」。謎の首相「アベシンゾウ」に対するアメリカ通信簿は、本当のところ、どうなのか?

世代交代を求める米国の声に耳を傾けよ

福岡(11月10日)、広島(11月11日)で開催する無料セミナーでは、この点について、日本の内政がマーケットに及ぼす影響も交えつつ、徹底してお話したいと考えている。


率直に言うと、米国における「アベシンゾウ」通信簿が2つに分かれているのは、評価している米国側が2つに分かれていることによる。米国のエスタブリッシュメント集団の中では今、「世代交代」が広がりつつあり、とりわけ新世代集団からすれば、アベシンゾウは好ましい人物であったようだ。


日本では未だに「小泉チルドレン」の残党たちが「改革!改革!」と叫ぶ中、米国は逆に、構造改革という「破壊ビジネス」によって焦土と化した日本に、ふたたび種をまく日本人を探していると聞く。国際社会に対してだけではなく、「日本という国家への貢献」がその際、日本のリーダーを選ぶ彼らの基準であるのだという。決して、「中国にも抑えが利き、安定感がある」といった、外面ばかり気にするオールドタイプの政治家はもちえない資質だろう。


この秋、いよいよ日本の大手メディアも、密かにではあるが、「言論人の再編」に着手し始めるようだ。「政治」と「メディア」――米国が残した、最後の「聖域」がいよいよ日本で変えられようとしている。


そのための大転換が、政治の上でもたらされる時、必ずや巨大な資金需要が生じ、マーケットで調達されるはずだ。ターゲットは来春。それが、日本の個人投資家にとって、中国バブル第一次崩壊後の最初の勝負どころとなってくる。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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