『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

次の「祭り」は中南米で起こる!

「世界の構造変化」に向けられた個人投資家の熱い眼差し

最近、セミナーなどを通じて日本各地をめぐっていて、ひしひしと気付くことがある。それは、2度の「世界同時株安」、そしてそのたびに発生する「円高・ドル安」の急展開で、日本の個人投資家の中で、じわじわと1つの大きな疑問がわき上がりつつあることだ。


「ひょっとして、世界全体を巻き込んだ大規模な構造転換がまもなくあるのではないか?」


ふと見ると、セミナー会場で普段は「結局、どんな個別銘柄がいいのですか?」「金融商品としては何が良いのですか?」といった細かな質問をされるクライアントの方々が、そういった質問を胸に秘めながら、私の話を聞いていただけているのが分かる。


去る8月に生じた「世界同時株安」を通じて、日本の個人投資家の内、実に8割近くの方々が損をしたという報道すらある。これまでは(悲しいかな)「騙されやすい」ことで有名だった私たち日本人も、そろそろ「真実の時」が近付いてきたことに気づかざるを得ない状況に置かれつつある。


しかし、こういう時だからこそ、マーケットとその周辺の言論界で出回る「エセ」の議論に気をつけなければダメだ。


「米国からの要求で、人民元はまもなく切り上げられる。だから、人民元を買っておけば、必ず中長期的にも得をする」


そんな無責任な議論をする論者が後を絶たない。しかし、「通貨」の世界ほど、偏見と実態が異なる世界はない。たとえば人民元を持っていて「得をするため」には、中国における金融マーケットが欧米や日本並みに整備されている必要がある。さもなければ、円に交換することもままならず、買い集めた人民元はまさに「宝の持ち腐れ」になる危険性があるからだ。


それでは、実際のところはどうか?中国「共産党」による支配を受けている国のマーケットが、どんなものであるかは明らかだ。号礼ひとつで「資本主義」であることすらやめられる国家。それなのに、安易な議論を展開する「個人投資家にとってのカリスマ」「米国陰謀論のカリスマ」たちの意図は一体何なのか?見極めるべき時が来ている。

人知れず武装大国となるブラジル

さて、中国の話に触れたので、同じ「BRICs」とひとくくりにされてしまっているブラジルについても見てみよう。私はこのコラムの中で、中国マーケットが、早ければ今年の晩秋に最初の「バブル崩壊」を迎えるとの分析を披露した。それでは、同じ「BRICs」仲間であるブラジルは一体どうなのか?


日本では全く報道されていないが、非常に気になる報道が最近、中国から流された。中国の国営インターネット・メディアである「人民網」が流した「ブラジルが軍事産業を復興へ」と題する記事だ(9月7日付)。


この記事によれば、ブラジル政府は国内の軍事産業の再興をはかるため、国防戦略の立て直しを検討するワーキング・グループの設置を決めたのだという。そして、軍事を拡張して何をするのかといえば、アマゾンの森林資源など豊富な国内の天然資源について権利を主張するために用いるのだと報じている。


そのブラジルは、マーケット的には今、どういった状況にあるのか?ブラジルにおける不動産マーケットは、世界に先駆ける形で低落したものの、だからこそ逆に、今、世界中からカネが集まりつつある。日本からもファンドによる不動産投資が相次いでいると聞く。


また、ブラジルといえば、バイオ・エタノールをつくるためのトウモロコシ栽培だ。環境問題を掲げ、欧米が騒げば騒ぐほど、穀物相場は上がり、ブラジル経済は高騰していく。


つまり、日本の裏側にあるブラジルは、「調子が良い」のである。しかも、今のところ、中国のようにバブル経済とその崩壊の「きっかけ」となるような出来事は見当たらない。「だから『買い』だ」と、ますます世界中からカネが集まってくる。同じBRICsでも、バブル崩壊直前の中国とはずいぶんと違っているように見える。

次の時代のキーワードは「モンロー主義」

しかし、ここでこうした流れに踊らされてはいけないだろう。「軍事大国」を目指しているブラジルには、そうするだけの理由があるはずだ。つまり、軍事を用いなければ解決できない問題を国として抱えているというわけなのであって、そのこと自体がマーケットにとってのリスクともなり得る。言い方を変えれば、今のブラジル・マーケットをめぐる動きは中長期的にみれば、実は「罠」かもしれないのだ。


名古屋(10月7日)で開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の情報分析セミナー「原田武夫塾Lite」(有料)においては、そのあたりの事情についてもじっくりとお話する予定である。


ブラジルがこうした動きを見せる背景には米国の動きがある。「世界の警察」として世界中に手も口も出していたはずの米国が、その外交政策を大きく転換させ、南北アメリカだけに神経を集中させる「モンロー主義」へと密かに転換しつつある。ブラジルがやりたい放題やりつつあるのは、その背後で米国の後押しがあるからなのだ。そして米国のターゲットには今、パナマ、コロンビアなども入っている。


持ちあげるだけ持ち上げておいて、最後はハシゴを外すのが、「米国流」である。かつて、メキシコについて90年代前半に持ち上げるだけ持ち上げたクリントン政権(当時)は、結果として1994年のメキシコ通貨危機を招いた。これが強烈な円高の原因となる。「中南米は米国の庭」、まさにいつか見た風景が、ふたたび私たちの目の前に展開しつつある。


この秋生じる、世界構造の大転換で、決定的な主役の1人になるのは中南米だ。ただし、そのことに気づいたならば、さらに「その先」のストーリを考えること。これが勝負の勘どころになってきそうだ。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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