投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
米国にハシゴを外される日本のイラク支援
ブッシュ政権に「花道」はあるのか?
夏休みも終わり、都会のオフィス街にも活気が戻ってきた。お盆直前にサブプライム・ショックで冷や水を浴びせられたマーケットも落ち着きつつある。
そんな中、海外在住の日本人のうち、9月になり秋を迎えてほっとしている人たちがいる。大使館などに勤務する職員たちだ。
夏休みとなると、国会議員や地方議員たちが「視察」と称し、大名行列で外国に繰り出す。その面倒を見るのが外交官たちだ。私もかつてその1人だったが、とにかく「議員先生」たちの面倒を見るのは大変だ。やれ、お土産はどこで買うのか、はたまた「カジノは無いのか」とやりたい放題、言いたい放題の大名旅行。9月になると、ようやくその波が収まるので、日本の外交官たちは遅い「夏休み」となる。
聞くところによると、この議員先生たちの大名行列、今年最も多かった行先は米国経由、中南米行きなのだという。どうせ、流行りの「バイオエタノール」を見に行こうとお題目を立て、実際にはニューヨークで買い物をしようという魂胆なのだろう。ついでにワシントンで、やれ「ブッシュ大統領と会わせろ」「ライス国務長官と会わせろ」と大騒ぎをしたに違いない。
きっと、大統領補佐官やら長官連中はいやいやながらも、髷(まげ)の似合う大名行列と連日、会ってくれたことだろう。何せ「日米同盟」なのだから。
しかし、私の得ている情報によれば「米国で本当に意味のある人たち」は今夏、こぞって米国にはいなかった。どこにいたのか?中東である。何のため?ブッシュ大統領が退任する際の「花道」をつくるためである。
ハメられた日本のイラク支援
今、米国が最も力を入れているのは「中東」での軟着陸だ。早ければ晩秋にバブル第一次崩壊が生じる「中国」はその次のターゲット。9月半ばころまでに、「中東」を難着陸させ、ブッシュ政権の成果としてプレイアップすることで幕を降ろすというのが現在のシナリオだ。
ところが、これで困る勢力がいる。いや、もっといえば、ブッシュ政権、さらにはそれを上からコントロールする「真の実力をもった閥族集団」から、そのためにスケープゴートとされる勢力。それがこれまでやりたい放題、中東で暴れまくってきた通称「ネオコン」たちなのである。
ラムズフェルド前国防長官に代表されるネオコンたちは、中東で地政学リスクを煽りたてては、それを理由に軍隊を動かし、そのアウトソーシングを自らがタッチする企業に受けさせることにより莫大な利益を上げてきたといわれる。
それだけに、「中東問題」が収まってしまっては困るのだ。そこで、当然、ブッシュ政権に対して今、最も刃を突き付けているというわけである。
当然、ブッシュ政権からすれば、彼らを切りたくて仕方がない。「花道」に汚れ役がうろつくのは耐えられないからだ。そこでネオコンとエスタブリッシュメントとの間で壮絶な争いが世界中で行われることになる。実はこれが、2007年秋を迎えた米国の実態なのである。
そのような中、去る9月1日から2日にかけて、日本では1つの重大なニュースが飛び交った。参院選での大敗を踏まえ、内閣改造で乗り切ろうと必死な安倍政権。その安倍政権にとって、最初で最大の障壁となるのが、アフガン戦争への日本の協力の根拠となっている「テロ特措法」の改正だ。
この法律に基づいて行える日本の協力はあくまでも「アフガニスタン戦争」だけ。しかし、ここにきて、実は日本が提供していた原油が、「イラク戦争」で展開してきた米軍にまわされてきたことが明らかになったのだ(2日付ANNニュース参照)。
「約束が違う!」日本からすれば、怒りの真実。「騙された!」と国民から追及されたらば、もはや安倍政権に逃げ道はないだろう。
しかし、ここで考えるべきは、「今、なぜこのようなことが明らかになったのか」だ。さきほど書いたとおり、米国では今、「中東」について難着陸が目指されている。日本がテロ特措法を延長しなければ、その油で潤うネオコンたちは苦境に陥る。他方、見方を変えると、日本における「対ブッシュ批判」を巻き起こすための、ネオコン一派による捨て身の攻撃のように見えなくもない。事と次第によっては、こうした米国の軍事作戦への日本の協力を声高に叫んできた、日本の「言論人」たちへの痛烈なバッシングへと発展していくことだろう。まさに「潮目」である。
2009年米政権交代後のマーケットを占う
日本政府はひた隠しに隠しているが、実は、日本の対イラク支援をめぐってはおよそ国民に知らせることのできない、大変な「秘密」がある。この国家機密に関与している外務省の人々にとって、この1日、2日に起きたアフガニスタン戦争をめぐる騒ぎは、「巨大な騒動の小さな始まり」にすぎないのかもしれないのだ。
そして、これが暴露されるかどうかは、2009年初頭に政権が交代する米国における争いがどのように決着していくかにかかっている。もっと具体的にいえば、そこで争う勢力のどちらかが情報工作機関を動かし、日本のメディアにリークさせれば、もはや「ジ・エンド」だろう。
なぜ、2003年にイラクで奥克彦参事官(当時)が惨殺されたのかもこのことと絡んでいる。同氏の突然の死を前に、なぜ、「親米保守派」「日米同盟論者」が大騒ぎをしたのかもすべて氷解するはずだ。イラク戦争と日本との関係をめぐる「カラクリ」が米国の手によって暴露されれば。
大阪(10月6日)、そして名古屋(10月7日)で開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の無料学習セミナーでは、その辺も含め、きっちりと分析と検証をお話ししていければと考えている。
「中東」での軟着陸は、要するに地政学リスクの軽減を意味し、原油価格の下落へとつらなっていく可能性が高い。それだけに、自らの手によって「創造」と「破壊」を繰り返す米国流金融資本主義とそれにまつわる政治の潮流から、日本の個人投資家たちも目を離せないのだ。巨大な「潮目」は今、まさに動きつつある。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
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