『国際政治経済塾』
投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

欧州勢のインド撤退が意味するものは?

エマージング・マーケットの終焉

前回前々回のこのコラムで、「今年の晩秋に早ければ中国バブルの第1次崩壊が起こる」との分析を披露したところ、大変大きな反響があった。発行部数100万部を誇るこのメルマガのコラムをお引き受けしたのは、何よりも「日本の個人投資家がカモにされる」という、現代金融資本主義の仕組みを変えたかったからだ。それだけに、たくさんの方々に私からの「警告」が届いたようで、非常にうれしい。


しかし、中には「また例によって原田武夫が、米国陰謀論を語っているようだ」と囁いている向きもあるようだ。そこではっきりと申し上げておく。「陰謀論(conspiracy theory)」とは、根拠が無いのに、森羅万象すべてを誰かのせいにするという議論のことを指す。しかし、私がこのコラムで述べていることは、こうした「陰謀論」とは全く違う。


私と私の研究所のスタッフたちが、日々、世界中の公開メディアを分析し、そこで流されている情報を丹念に分析するとともに、これに非公開情報を加味する。それによって、それぞれの段階での情勢分析が出来上がる。これは金融インテリジェンスの手法そのものなのであって、何らの根拠が無い、観念的な「お遊びインテリジェンス論」や「陰謀論」とは全く違うのである。


また、現段階での分析によれば、この秋に金融資本主義のシステムが世界的に大きな変動を迎える可能性が高い。そしてそこでは、これまでのようにやれBRICsだ、Next Elevenだ、VISTAだと投資銀行などに煽りたてられてきた、地理上の「エマージング・マーケット」というシステム自体が大幅な修正を迫られそうなのである。中国バブルの第1次崩壊は、そうしたシステム変更の一部にすぎない。

欧州勢のインド撤退が意味するものは?

そこで問題となってくるのが、BRICsのほかの3カ国は一体どうなるのかということである。ブラジル、ロシア、そしてインドのどれもが気になるが、特に気になるのがインドだ。何せ、この夏休みを利用して安倍晋三総理までもがインドを訪問し、例によって多額の資金供与を約束してきたばかりである。大丈夫そうに見えなくもない。


しかし、最近、例によって日本の大手メディアは全く報じていないが、気になる報道が英国であった。タイトルは「ノバルティスがインドから研究開発部門を撤退」(2007年8月21日)、報じたのは最大手経済紙であるフィナンシャル・タイムズだ。


これによれば、スイスの大手製薬企業グループであるノバルティス社が、インドでの研究開発に対する投資を停止するのだという。なぜか?その理由は、インドにおける知的財産権をめぐる環境悪化にある。8月初旬に同社のガン治療薬の特許保護について、インドの裁判所が同社の訴えを却下した。これを受けて同社はインド撤退。報復ではないというが、「寝室に強盗が入ってくるような連中が暮らすところに家を建てたりしないのと同じ話だ」と鼻息が荒い。

「常識」が通じない今秋に備えよ

なぜこの記事が重要なのか?それは、欧州勢の動きを丁寧にたどっていくと、それがマネーをめぐる「世界の潮目」を示す場合が多いからだ。ちなみに今、世界中で大騒ぎとなっている米国における景気減退。これをにらんだ欧州勢によるNY市場からの上場廃止・撤退は、実は今年の5月からすでに始まっていたのだ。「潮目」の予兆は、3か月も前から現れていたことになる。


大阪(10月6日)、そして名古屋(10月7日)で開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の無料学習セミナーでも、そのあたりの状況をしっかりと御説明することにしたいと思う。この秋、「中国を理由とした急落」を控え、最後の稼ぎ時とばかりに日本マーケットを中心にアジア株は高騰する可能性が高い。


その際、特に途上国のマーケットについては、「エマージング・マーケット」として育ったからという「常識」が語られることだろう。しかし、その先に「奈落」が待っている。システム変更という歴史的転換を美酒を酌み交わしながら迎えられるか、あるいは失意の撤退となるかは、私たちの情報リテラシーにかかっている。

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筆者プロフィール

名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表
著書『世界と日本経済の潮目 2008年―金融マーケットを先読みせよ メディア情報から読み解くマネーの潮流 』

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