中国とインドが連続クラッシュする日
良いことはいつまでも続くとは限らない
人間というのは哀しいもので、良いことはいつまでもずっと続くと考える癖がある。その一方で、悪いことは今すぐにでも去って欲しい、いや、去るものだと信じ込んでしまうことがままある。
マーケットとそれを取り巻く国際情勢も全く同じだ。
ある国のマーケットが「エマージング・マーケット」として盛んに宣伝されたとする。実際にインデックスなどを見てみると、かなり高騰している(かのように見える)。
「じゃぁ、ファンドでも買ってみるか」。すると、ますます高騰し始める(かのように見える)。「このまま絶対に騰がり続けるに違いない」と思って、どんどん有り金をつぎ込んでいく。
だが、このようなサイクルに入ってしまった瞬間、私たち=個人投資家は負けなのである。ファンドや投資銀行といった「越境する投資主体」たちは、その辺もちゃんと織り込んだ上で大戦略を立てている。さらにその上で資金提供をする国際金融資本といえば、なかばそうした情報フローのコントロールだけをもっぱらやっているかのように見えるほどだ。
彼らは“マーケットにおける良いこと(=高騰)”を見せつけては、必ず自らEXIT(売り抜け)をするための方策を裏では打っているのである。近代資本主義、そして現代金融資本主義において何度も繰り返されてきたこの仕組みの中に、私たち個人投資家がはめ込まれていることに気づかなければならない。
しかし、こうした仕組みを見抜くのはそれなりに難しい。なぜなら、「越境する投資主体」たちは、ありったけのカネをはたいて世界中よりエリート中のエリートを集め、もっともらしく聞こえる“スローガン”“論理構成”を考えさせるからだ。
そこで騙されないための鉄則はただ1つ。「良薬は口に苦し。駄薬は甘し」である。分かりやすい思考枠組み(スキーム)であるほど、落とし穴も深いことに気をつけるべきだ。
中国とインドが連続クラッシュする?
この観点から私がかねてより警告を発しているのがBRICsという標語である。地政学的観点から見ると全く異なる文脈にあるブラジル、ロシア、インド、そして中国の4カ国。これを十把ひとからげにして持ち上げるこの呼称が持つ凄みに気づかないようでは駄目なのだが、今や日本ではそうした意識もないまま、この言葉は使われている。
そこで私は最近、次のように言うようにしている。
「確かに中国とインドはそれなりに経済発展をしています。しかし、これら両国の経済が、何らかの理由で共にクラッシュするという可能性はないのでしょうか?つまり、BRICsというスキームの化けの皮がはがれる瞬間というのは想像できませんか?」
この観点から、非常に興味深い報道が最近1つあった。最近、北京にあるインド大使館の一等書記官(科学技術担当)がインド外務本省に召還されたというのである(5月2日付「ザ・タイムズ・オブ・インディア」参照)。表向きの理由は、家族の健康上の理由ということにされているらしい。
しかし、実際には中国の情報機関お得意の“ハニートラップ”、すなわち女性工作員を使った防諜活動の罠にはめられたことが、召還の理由だと報じられているのだ。ちなみにこの一等書記官は、普通の外務省員というのはあくまで表の顔、ダミーであり、実際には米国の中央情報局(CIA)に相当する研究・分析局(RAW)の職員なのだという。つまり、中国とインドの間で、あまりにも露骨なインテリジェンス戦争が勃発しているのである。
インドと中国は、かつてチベットをめぐって中印紛争を激しく争った経緯がある。つまり両国の間には典型的な領土紛争があり、国境地域にはいまだに核兵器を含む重装備が施されているとの情報もあるくらいだ。
そしてチベットといえば、最近になって暴動が起きたばかりだ。まさに一触即発、仮に中国あるいはインドの指導部が本気になれば、BRICsという友好モードから一転、かつての軍事的敵対モードへと転換することもありうるのだ。
だからこそ、両国共に互いへ網を張り、警戒するのである。今回の事件も、そうした文脈の中で読み込まなければ足を踏み外すのである。
ありえないことが起きる未来に備える
こうした「ありえないことが起きる未来」に対してどのように備えるべきか、私は5月23・24・25日に神戸・京都・静岡、6月7・8日に横浜・東京でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で、じっくりお話できればと考えている。
米国が金融資本主義の覇者となる道をゆっくりと歩み始めたのと、米国において大衆デモクラシーが徐々に形成され、大衆を操作するためのマスメディア研究が盛んになり始めたのが、共に1910年代であったことを今こそあらためて想起すべきである。そう、両者は互いに結びついているのである。マスメディアが流す情報を読み解けない者は、金融資本主義の中で生き残ることは出来ないのだ。
金融資本主義は、選択され、選定されるプロセスである。全ての人が等しくチャンスを持っているのに、必ず勝者と敗者が出る。負けたからといってジタバタしたところで何も始まらない。なぜなら、それがゲームのルールなのである。しかし、負けたくないと思うのは誰しも一緒なのである。それでは、負けないために一体何をすべきなのか?ということになる。
カギは「情報リテラシー」、すなわち「ありえないことが起きること」を想定し、かつ「良いことは必ずすぐ終わる」という覚めた認識を常に持ち続けることだ。理由無き高揚感が演出されているマーケットが眼前にあるだけに、今、私たち自身が選択され、選定されつつあるのだということを忘れず、「情報リテラシー」を磨く道のりへ、しっかりと最初の一歩を踏み出す必要があるのだ。
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筆者プロフィール
名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表。
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