大幅下落はまだ続く?〜新興国への投資をどう考えるか(1)

日本市場の騰落率、52カ国中51位

3月3日の日経平均株価は、米国市場の下落、円高の進行などを受け、前週末比610円安の1万2,992円となり、終値としては1月23日以来の1万3,000円の大台を割り込む結果となりました。

08年は年頭から大幅下落に見舞われた日本市場。日本株の魅力に対して懐疑的になっている方も多いのではないでしょうか。下記に紹介する『週刊東洋経済』2月2日号の特集記事「グローバル総点検、世界同時株大暴落」のデータを見ると、それも致し方ない、という気になってしまいます。

順位 国・地域 07年騰落率 10年平均リターン
1位 ナイジェリア 110.56
2位 スロベニア 85.84
3位 インド 78.98 22.27
4位 ブラジルス 74.64 22.21
5位 トルコ 73.55 11.51
6位 中国 66.91 22.32
7位 ペルー 66.66 25.47
8位 エジプト 51.79 25.40
9位 チェコ 49.52 27.41
10位 インドネシア 48.14 17.72
中略
17位 香港 36.09 12.92
中略
22位 ドイツ 30.64/td> 11.22
23位 ギリシャ 28.56 15.73
24位 カナダ 26.43 14.06
中略
31位 ロシア 22.05 19.28
中略
40位 フランス 9.76 12.88
41位 台湾 5.21 1.12
42位 スイス 4.96 8.69
43位 米国 4.02 6.66
44位 英国 3.62 8.60
中略
51位 日本 ▲6.55 5.15
52位 アイルランド ▲19.62 10.14
(出所)『週刊東洋経済』(2008.2.2)P.33より一部抜粋

日本市場の騰落率は、なんと52カ国中51位という結果。過去10年の騰落率でも、決してよい結果とはいえません。他方、BRICsと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国のうち、ロシアを除く3カ国はトップ10入りを果たしています。

人気を集める「国際株式型」投資信託

こうした状況を受け、07年5月には「国際株式型」投資信託の残高が、「国内株式型」投資信託を上回りました。簡単にいうと、日本株より海外株の投信のほうが人気があったということです。しかも、両者の差はその後も広がり、同年10月には国際株式型の残高は10兆円を突破しています。

国際株式型の代表例は、ピクテ投資信託顧問が05年2月に始めた「グローバル・インカム株式ファンド(グロイン)」でしょう。グロインは、欧米の電力企業などに投資することで、毎月高い配分金を支払っており、地方銀行などが積極的に販売していました。その結果、グロインの残高は08年1月末日現在で2兆1,300億円にのぼります。

このように人気を集めている国際株式型の対象は欧米だけではありません。中国やインドなどの新興国の株式で運用する投信も人気を集めています。

私は元々、買い倍株への投資魅力を、機会あるごとにお伝えしてきました。中国株については以下のように記しています。

株式投資は、謎があるからこそ魅力が増すということがある。
中国の謎とは、「不透明」。

(中略)

「マンションができる前に販売し、業者が建物ができる前に資金を抱えて姿を消す」
「開発業者が架空の予約販売を捏造(ねつぞう)し、銀行から不正に住宅ローンを引き出す」
「国有銀行最大手中国工商銀行の住宅ローンの不良債権比率のうち80%は契約の中身自体にうそがある」

だから投資をしてはいけない、という意味ではない。最終的に透明になるのであれば、いまの不透明はむしろチャンス。

中央銀行である中国人民銀行が他の官庁に口出しをするのは、透明にしていこうとする姿勢と見るべき。外資系金融機関が積極的に中国の国有銀行に投資をしているのも偶然ではない。

2005年9月13日付メールマガジン『投資脳のつくり方』より

当時はまだ上海総合株価指数は1,000ポイント程度でした。しかし、私たちがすでに経験していた銀行の不良債権問題に目をつけ、私は上記のように中国株投資の魅力をメールマガジンでお伝えしたのです。

大幅下落の新興国株への投資をどう考える?

しかし、その後、新興国市場が順調とばかりはいえない状況であることは皆さんもご存知の通りです。

まずは先に挙げた中国。07年2月末に上海市場総合指数が9%近い下げを記録。その後、香港ハンセン指数も大幅下落となり、株安の流れはアジア、そして全世界に広がり「上海発・世界同時株安」の様相を呈しました。

このころには中国バブル崩壊の可能性を指摘する声も大きくなりました。また08年に入って、「中国の金融機関もサブプライム関連で損失」と報じられ、大きく下げる場面がありました。中国株に関しては、少なくとも闇雲にいつまでも上昇し続けるといった“成長神話”は崩れ去ったように思われます。

またインドに関しても同様です。08年1月21日のインドSENSEX指数は、一時、約11%も下落し暫定の7.13%安で取引を終えました。予想を上回る大幅な下げに、衝撃を受けた方も多かったでしょう。3日の同指数も約3%安の1万6,976ポイントとなり、1万7,000の大台を割り込んでいます。

サブプライム問題を発端とする米国の景気後退への懸念、そして「米国が低迷しても、切り離された新興国は成長を続ける」という楽観的なデカップリング論が否定され、新興国株も厳しい状況に置かれています。

最初に挙げたように日本市場の騰落率と比較すると、もちろん「まし」な成績だといえるかもしれません。しかし、数年前までの「新興国成長神話」をそのまま信じていていい状況ではないことは確かです。

サブプライム問題をきっかけに、世界のマーケットは転機を迎えたといってもよいかもしれません。それに際し、新興国への投資をどう考えればよいのか。

私は2月21日(木)から26日(火)まで、英国プルーデンシャルグループ、PCAアセットマネジメントのインド視察旅行に同行し、インド株市場をじっくりと見てきました。その詳細は、アメーバオフィシャルブログ「テルノブログ」でも掲載しています。私は、インド株式市場への投資魅力は高いと考えています。今回の視察で、その考えがさらに強まりました。

次回のこのコーナーでは、実際に訪問したインド株市場の今後の展望を、各種データを駆使し解説したいと思います。

元々、インド株式市場への投資魅力を感じていました。私自身、毎月新興国市場に投資する投資信託を積み立てしています。一歩でも踏み出すことで、その後にリターン得られる可能性があるのであれば、少額から始めてみるのもよいのではないでしょうか。次回のこのコーナーが、そのきっかけになれば、と思っています。(木下)
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木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

投資脳のつくり方

マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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