投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
“Twitter人気”に米系インテリジェンス機関の陰
SNSを巡る“暗い過去”
情報の発信者が一方的に語りかけるWeb1.0と違い、誰もが発信者であり受信者になれることを謳い文句にして爆発的に広まったのが“Web2.0”だ。日本でも一時、爆発的に広まったこの言葉は、ウェブログに対する「新し物好き」たちの関心が薄れるにつれて、徐々に死語になりつつある感がある。
しかしこうした状況を、ここに来て再び“反転”させたツールがある。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サーヴィス)の新旗手として華々しく登場したtwitterだ。字数こそ限られているものの、リアルタイムで「つぶやく」ことに対し、他者が応える(=フォローする)という単純な形が受け、日本でも多くの“著名人”たちが使用。その勢いは徐々に一つの“現象”となりつつある。
一部の“著名人”がこぞって勧めるSNSの最新ツール「twitter」だが、ここで私は読者の皆様にあえてWeb2.0を巡る「原則論」を繰り返しておきたいと思う。Web2.0とは、とどのつまり、米国勢がターゲットとしている国・地域・組織・個人が持っている“情報の非対称性”(=こちらは相手をよく知っているが、相手はこちらのことをよく知らないという状態)を奪うために使用しているものである。
私はかつてこの点について米陸軍の研究文書を下に、米国勢の意図と戦略を研究、公表したことがある。イランや中国といった“非民主主義国”を対象として、Web2.0の代表格であるウェブログがいかに有効な手段であるか、米陸軍はその文書にて仔細に研究をしていた経緯がある。しかも、米国勢の流布する“言論”に沿う形でブロガーを「育てる」こと、あるいは都合の悪い言論を流布するブログを「破壊する」ことなど、かなり具体的な手法すら言及されているのだ。
このようにWeb2.0が米系インテリジェンス機関にとって不可欠なツールであることを示す証としては、逆に米軍内部でWeb2.0の使用が続々と禁止されてきているという「事実」もある。例えば昨年(2009年)8月、米海兵隊はtwitterやFacebookといった人気のSNSの使用を全面的に禁止する旨の通達を出したばかりだ。もし仮にこうしたWeb2.0がインテリジェンスの視点から見て、何ら問題が無いということであれば、こうした措置が取られるはずもない。防諜(カウンターインテリジェンス)を講じられる以上、すなわち米国勢としてはターゲットを攻める際におけるその“効用”も十二分に認識していると考えるべきなのだ。
「民主主義促進のためにtwitter!」と叫び始めた米国勢
この関連でマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。米国務省、さらには米連邦議会上院の中でも“外交族のドン”として知られるリチャード・ルーガー上院議員がこぞって「twitterを広めることで、世界中に民主主義を普及させるべきだ」と叫び始めたというのである(7日付 米国ザ・ヒル・ドット・コム参照)。正確にいうと、こうしたSNSツールをもってして“世界規模の民主主義プラットフォーム”を作るのだという。しかし、繰り返し強調しておきたいのだが、当の米国勢はtwitterを軍隊の中で使用するのを禁止すらしているのである。一方でこれを世界中に流布させるべきと語り、他方で自らはこれを徹底して使わせず、禁止するという異様な矛盾。――その陰に一体どのような意図が隠されているのだろうか。
米国勢がいわば“十八番”としているのが、「民主主義」あるいは「人権」を理由にターゲットとした外国勢に対し、土足で介入するという手法だ。例えばイランとの関係については、2006年より米連邦議会は米国国務省予算として数千万ドルをイランの“民主化”のために計上してきたという実績がある。「民主主義プログラム(democracy program)」と名付けられたこの予算によって、実際のところ何が行われてきたのかについてはつまびらかにされていない。そして、イランの民主化どころか「体制変更(regime change)」をもくろむネオコン勢によって恣(ほしいまま)にされているのではないかとの指摘すらある。そのため米国国内においても批難の声が絶えないのが実態だ。
確かに今回、米国務省が公表したプログラムはこれに比べると遥かに穏やかではある。来る21日までの間、「貴方の考える民主主義とは?」と題し、世界中からtwitterあるいはFacebookで投稿を求めるといったレヴェルに過ぎないからだ。しかし、何度でも繰り返して申し上げておきたい。――米国勢は公的にこれらSNSの使用を、とりわけインテリジェンスという観点で問題となる分野(軍部)において禁止しているのである。それだけの危険性をはらむものを、なぜ「民主主義」という美名の下、世界中に流布させるべきというのか?今、ここであらためて考えなければ、明日には“情報の非対称性”を奪われた哀れな私たち=日本人の姿が見えてくるかもしれないのだ。
2010年:米国勢は何を仕掛けるのか?
この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で日本マーケットを取り囲む米国勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は今月(1月)30日に大阪で、31日に名古屋でそれぞれ開催する「IISIAスクール」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。また、1月23日には今回で3回目となる恒例の「IISIA年頭講演会」を1,000名規模で東京・杉並にて開催する予定である。既に800名近い方々のご応募頂いている。是非、お早目にお申し込み頂ければと思う。
日本においてはここに来て、総務省が主導する形で公職選挙法を改正し、「インターネット選挙」がいよいよ本格始動される流れとなってきた。ITセクターにとっては正に“万々歳”といったところだろうが、上記の延長線上で私たち=日本人が考えておくべき点があると私は強く懸念を抱いている。なぜなら、現段階で「インターネット選挙」という以上、Web2.0が前提となるのであって、そうなると立候補した者のみならず、有権者たちも積極的に意見をインターネット上に述べることで、思想・信条を含め、丸裸にされてしまう可能性があるからだ。しかもそうした姿がさらされるのは日本勢に対してだけではない。アジアの大国・日本の国政選挙を熱い眼差しで密やかに見つめる米国勢もまた、これまでは“足で稼ぐ”形で情報収集しなければならなかったのが、選挙という重要な局面においてPCの画面越しに日本勢の“生の声”を知ることが出来るようになってしまうのである。そして、米系インテリジェンス機関の言う“インテリジェンス・サイクル”が「情報の収集はそれに基づく作戦行動を前提としている」と語る以上、その次に待っているのは米国勢による“民主主義”という美名の下における対日作戦行動だというわけなのである。
いわゆる“著名人”が不思議とこぞってSNSを使い、“ささやき”始めた現代日本社会。戦後日本においてアメリカン・デモクラシーを「民主主義」の絶対的な形態と刷り込まれてきた私たち=日本人をさらに“民主化”するという“潮目”がすぐそこに迫ってきている。対日政策をも司る米国務省がSNSツールを「民主化促進」というプロパガンダのために使い始めるべく“予算”を獲得し、実際に執行し始めたことと、これら“著名人”たちの余りにも不可思議なSNSへの殺到ぶりを睨みつつ、その先の時代に私たち=日本人は本当に自由を奪われないままでいられるのか?
“民主化”が問題なのは上記の「イラン」だけではない。事態は着実に私たちの国=日本でも進んでいるのだ。騙されてはならない。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
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