『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

隠された“言論統制”が日本から消える日

日本に「言論の自由」は無い?

日本では、高校の公民の授業で必ず習うことが一つある。「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲をしてはならない。通信の秘密は侵してはならない」(憲法第21条より要約)。


いわゆる“表現の自由”を定める条項だ。平たく言えば、「何を言っても構わないし、何を書いても構わない」という世の中のルールである。もちろん、表現をした結果、他人の権利を害してしまうことは許されず、「名誉棄損」として訴えられてしまう。しかし、憲法は基本的に巨大な「国家」と、弱く小さな「個人」との間のルールを定めたものである。したがって、ここで言う「検閲」とは、国家による“検閲”を指すものと一般的には考えられている。


「それでは誰かを傷つけない限り、日本においては何でも言って良いのか」――外務省を自主退職してから5年余り、まずは“言論人”として活動してきた筆者の率直な答えを言うならば、明らかに“NO”だ。もちろん独り言を言うのであれば、何も問題は無い。だが、自らの論をはっきりと述べ、それを世に問うことで少しでも世の中を良くしていこうとすればするほど、ぶつかる大きな壁が実際にはいくつも立ちはだかっているのである。


その一つが「ユダヤ」に関する問題であり、国家としての「イスラエル」に関する問題だ。日本の伝統的な大手メディアは、発言者の立場からいうとあまりにも滑稽なほどに、これらの論点に触れることを忌避(きひ)する癖がある。したがって、広く人目に触れることのない学術書を除き、真正面から語る言論は戦後日本において皆無であったといっても過言ではない。あるいは勇気を出してこれらの点について議論を試みたところで、どこからともなく、やれ「陰謀論だ」、「思い込みだ」などと誹謗中傷すら聞こえてくるありさまである。


ちなみに日本国憲法にいう「検閲」には、国家権力だけではなく、社会的権力を含むという見解を述べる憲法学者たちもいる。仮にこの説をとるならば、こうした誹謗中傷を怖れるあまり、「自主規制」によって発言者に発言の機会すら与えない日本の伝統的な大手メディアは、正に「検閲」を行っているという
ことになるのであろう。

追い詰める米欧勢、追い詰められるイスラエル勢

こうした観点でマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。今年1月24日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで発生したイスラム原理主義組織「ハマス」幹部の暗殺事件に関連し、英国政府が真正面からイスラエル人外交官を国外から追放したのに続き、フランス政府も同様の措置を検討し始めたというのである(23日付 イスラエル「デブカ・ファイル」参照)。この暗殺事件については、そもそもドバイ当局がイスラエル系情報工作機関「モサド」の関与を示す証拠を公表したのに対し、イスラエル側は一切コメントしてこなかったという経緯がある。ところが暗殺の実行にあたり、諜報員たちが英国やフランスをはじめとする各国のパスポートを偽造し、使用していたことが判明。これら関係国政府が“主権の侵害だ”と激昂してきたというわけなのである。今回の措置に踏み切るにあたり、ミリバンド英外相は下院(国会)の場でイスラエル勢を真正面から糾弾(きゅうだん)する答弁を行った。こうした「イスラエル封じ込め」という“潮目”に今、フランス勢が飛び込もうとしているというのである。追い詰められたイスラエル勢による次なる一手に注目が集まっている。


これだけなら、単に国家間の争いが飛び火しただけのように見えるのかもしれない。しかし、このストーリーの裏側でもう一つ別の、しかし明らかに密接に関連したストーリーが展開していたとなると様相は一変する。――英国勢がこうした決断を下した直後、今度は訪米中のネタニヤフ・イスラエル首相がオバマ米大統領と会談を実施。しかし、その場で懸案となっていた東エルサレム入植問題についてイスラエル勢は全く引かず、話し合いは平行線に終わったというのである。こうした状況を踏まえ、ワシントンからは「米イスラエル関係は過去35年において最悪の時期を迎えている」との声が続々と聞こえてきている。「イスラエル封じ込め」を行っているのは、欧州勢だけではないのだ。これに米国勢も実は加勢しており、今やその緊張は最高潮に達しつつあるのが実態なのである。

これから起きる本当の“潮目”を知る

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で米欧勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は4月24日に浜松・静岡でそれぞれ開催する「IISIAスタート・セミナー」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある方は是非ともお集まりいただければ幸いである。


これまでイスラエル勢は、国際社会で追い詰められるたびに米国勢とすら協議せずに対外的な武力攻撃を実施、その矛先をかわしてきた経緯がある。イスラエル勢は東エルサレム問題、あるいはパレスチナとの和平問題で“ごねる”姿勢の中、地下施設を爆破することのできる米国製最新兵器「バンカー・バスター弾」を米国勢にねだっているという情報がある。この武器を手に入れてイスラエル勢が何をしようとしているのかというと、答えはただ一つ「対イラン限定的空爆」である、という分析がある。「核兵器開発」を止めようとはしないイラン勢に対し、恐怖感を募らせてきた潜在的核保有国(=イスラエル勢)は、地域における覇権を確保すべくイラン勢に鉄槌(てっつい)を下すと見るのである。一方で米国勢は、イスラエル勢が先にイラン勢に手を下すよう求めてくるものの、これに応じない。それどころか、「地域の平和のためには、まずイスラエル勢が1967年の第3次中東戦争以前の規模にまで領土を縮小すべきだ」と要求しているというリーク情報もある。イスラエル勢としては、これを絶対に容認するはずもない。ついには行き場所がなくなり、思い余って『対イラン限定的空爆』に踏み切り、逆に国際社会全体から“封じ込め”にあい、下手をすると国家として存亡の危機に立たされる可能性が出てくると考える方々もいる。


もちろんこれは展開可能性の一つであって、現段階で確実なことを言える人は誰もいない。だが、あえて一つだけ言えることがある。それはこうした展開可能性について、日本の伝統的な大手メディアが一層語ろうとしてこなかったということである。それどころか、彼らは上記のような自主的な「言論統制」を続けてきている。しかし、仮にこうした劇的な展開が見られた場合、彼らとしても一体何を躊躇することがあるだろうか。――怒涛の如く、これまで封殺されてきた言論がユダヤ、そしてイスラエルを巡って噴出するという“潮目”がそこに迫ってきている。


誤解なきよう記しておきたいのであるが、私は何も国家としての「イスラエル」が存立すべきではないと、一定の価値観を持って言いたいのではない。そこには普通に暮らす市民がいて、私たちと同じように日々の幸せを求め、暮らしている。私としても、彼らの幸福を引き続き願ってやまない。だが、問題は今後一つの大きな可能性として「イスラエルの封じ込め」が行われる可能性の高い時に、一言たりともそのことを語らず、注意を促さない日本の伝統的な大手メディアにあると考えているのである。その意味で、中東においてこれから発生し得る巨大な“潮目”は、単に商品(コモディティー)マーケットにおける乱高下(原油価格の高騰、金(ゴールド)の暴騰、海運株の上昇)を招くだけではなく、より積極的に私たち=日本人自身が自らの所作を振り返り、襟を正す最後の機会を与えてくれるものなのかもしれない。



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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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