再度の大暴落はあるのか?09年株価を左右する2つのポイント
2008年は記憶と記録に残る1年になりました。では、2009年は一体どんな年になるのでしょうか?年頭のこのタイミングに、08年を振り返りながら09年の株式市場の展望を述べたいと思います。
※08年の各月のトピックスについては、下記のバックナンバーをご覧ください。
http://money.mag2.com/invest/soubanote/2008/12/081.html
http://money.mag2.com/invest/soubanote/2008/12/081100.html
09年、株価暴落の可能性は?
“100年に一度の恐慌”といわれた08年ですが、シンプルに考えればポイントは9月に絞られます。リーマン・ブラザーズ証券の破たんが、世界の景色を一変させてしまったのです。
同年3月にはベアー・スターンズ証券を救った米当局が一転、リーマンを破たんさせてしまったことが恐慌の引き金となりました。市場関係者は米当局の「ダブルスタンダード」に戸惑ったのです。
株価の乱高下ぶりはすさまじく、ニューヨークダウの上昇・下落幅ランキングを見ると、過去の上昇幅10傑のうち7つ、下落幅10傑のうち6つが08年の取引日で占められています。
また日経平均株価も、日経新聞08年12月26日付の記事によると、「一番下げのきつかった10月16日の下落率(11.4%)について発生確率を逆算すると、224京年(京は兆の1万倍)に1回という天文学的数値になった」というほどの下落に見舞われました。
09年最大の焦点は、こうした暴力的ともいえる株価の下落が再びありうるのか、という点だと思います。そして、私はその可能性は低いと考えています。
デフォルトに対する懸念から加速した「現金化」
なぜ「暴落の可能性は低い」と私が考えているのか。その理由は大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、「デフォルトリスクの後退」です。
9月、10月の株価の暴落の原因は、リーマン・ショックがクレジット・クランチ(信用危機)を引き起こしたことでした。リーマンが“本当に”倒産してしまったことで、投資家は企業の債務不履行(デフォルト)を強く意識するようになりました。
そのような状況の中、投資家がまず考えるのは「現金化」です。経済学者のピーター・ドラッカー博士は、著書『経済人の終わり』の中で、以下のように述べています。
大衆は、世界に合理をもたらすことを約束してくれるものさえあれば、自由を放棄してもよいと覚悟するにいたった。自由が平等をもたらさないならば、自由を捨てる。自由が安全をもたらさないならば、安全を選ぶ。自由によって魔物を退治できないとなれば、自由があるかないかは二義的な問題にすぎない。自由が魔物を招くのであれば、自由の放棄によって絶望からの解放を求める。
しかし現在、デフォルトに対する懸念はかなり沈静化していると考えられます。例えば、ウォルマート、インテルなど米国を代表する企業の社債が組み入れられているETFは、現在ではリーマン・ショック前の水準に回復しているのです。
(出所)Google Financeより
この背景には、金融サミットで各国が一致団結することが確認されたこと、シティ・グループに対しての巨額支援などを通して米当局に対する信頼が徐々に戻っていることなどがあるでしょう。
また、米財務省が金融機関の保有する不良債権から将来生じる損失を政府が肩代わり保証する制度を導入したと発表しています。これは、他の金融機関もシティと同様の救済を受けられるようにしたもので、信用収縮に歯止めをかけることが狙いです。
“雇用なき株高”の時代が来る?
「デフォルトリスクの後退」に加え、株価暴落の可能性が低いと私が考える2つ目の理由は、米国がゼロ金利政策に踏み切ったことです。すぐに効果が出るものではないかもしれませんが、09年以降着実に効果を発揮してくると思います。
というのも、かつて90年代前半、米国では不況、そして高い失業率に苦しみながらも株価が上昇を続けた時期がありました。その際、急激な利下げにより生じた潤沢なマネーが、株価上昇の大きな要因でした。
米政府がゼロ金利政策に踏み切った今、90年代と同様の“雇用なき株高”が起こりうる、と考えています。特に金融株、資源株、中国をはじめとした新興国株には、再びマネーが流れていくのではないでしょうか。
- 雇用の悪化や給与削減など、09年の実体経済は08年以上に悪化することでしょう。でも、株価は一早く回復する可能性は高いと考えています。いずれにせよ、自分なりの仮説を持つということが非常に重要です。年初、今年をどう占うか、1人1人考える時間を持ったかで、得られるものはずいぶん異なってくるように思います。 (木下)
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木下晃伸(きのしたてるのぶ)
経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。
投資脳のつくり方
マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。