投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
チャイナ・バブル崩壊が起きるこれだけの理由
6カ国協議から始まる米中の仁義無き戦い
4月を迎え、外資による「日本買い」が始まる三角合併の解禁(5月1日)まで残すところわずか1カ月となった。つい先日、2月28日から生じた「世界同時株安」の結果、実は日本の個人投資家たちは「善戦」したのではないかという声をマーケットの奥深くに暮らす人々から聞くことがある。
さすがにこれまで騙され続けてきた個人投資家の方々も、数多くの苦い経験から学習を積み重ねてきたのだろう。私は現在4月14日の夜に行う500名規模の無料の謝恩セミナー(東京)の準備をし、これからの「大勝負」に臨む個人投資家の方々を支えたいと思っている。
日本のマーケットで、まさにそうした「臨戦態勢」だからこそ気になるのが、それを取り囲む国際情勢と、その中でうごめくファンドや投資銀行といった越境する投資主体たちの動きだ。イランが表向きには炎上しつつある一方で(ただし本当に「危機」であるかどうかは、米ドルや金への逃避具合を見なければ判断できない)去る4月22日に突然「休会」となった北朝鮮問題を巡る6カ国協議に関する動きが非常に気になる。
なぜなら、そこでは明らかに米国と中国という、金融資本主義化した世界の中の2つの「帝国」がぶつかり合っており、そのディールの結果如何では、日本のマーケットをめぐってこれまで描かれてきたすべてのシナリオがひっくり返される危険性すら出てきているからだ。
米国の本当の狙いはチャイナ・バブル崩壊の前倒し?
メールマガジン『元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る』や原田武夫国際戦略情報研究所公式ブログでも先日、簡単に触れたことなのだが、今回の6カ国協議の突然の「休会」の原因は、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」にある北朝鮮関連口座の資金について、米国が金融制裁を停止することを約束したものの、その受け入れ先とされた中国銀行が受取りを拒否したことにある。
つまり、米朝がお互いに握り合った内容について、中国が「聞いてない、知らない」とそっぽを向いたわけだ。米国の慌てぶりは、その直後に財務省高官を特使として北京とマカオに急遽、派遣したことからもわかるのである。
しかし、この出来事をより詳しく見てみると、実態が「マネー戦争」そのものであることがわかる。というのも、2月1日付「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙によれば、マネーロンダリングの手助けをしていただろうと詰め寄る米国財務省に対し、バンコ・デルタ・アジア側は「自分たちには偽米ドルを見分ける技術はない。すべて、香港上海銀行(HSBC)のニューヨーク支店に送金し、その上で検査してもらっていた」といったのだという。
仮にこれが真実であるならば、米国当局はすでに長年にわたって、ニューヨークで「偽米ドル」を把握できたことになる。それなのに今になって大騒ぎすのはなぜかという大きな疑問が出てくるのだ。
そして、香港上海銀行は英国系のアジア最大の金融機関である。この問題を追及することは、英国の国家財政を支える巨大な国際資本を米国が敵に回すことになりかねないのだ。さすがのブッシュ政権でも、なぜここまで及び腰なのかということの理由がそれでわかってくる。その一方で、先日の「世界同時株安」の引き金の1つに、香港上海銀行が米国マーケットで巨額の不良債権を抱えるに到ったという報道が全世界を駆け巡ったことについても、誰がそう仕向けたのかが分かるのである。
「仕掛け」に気づいた個人投資家だけが救われる
「一歩退いたら、二歩前に出る」―――これが、米国流ビジネスの基本であるとよく聞く。だとすれば、やや及び腰のように見える米国勢も、実際にはその次のシナリオを描いて行動している可能性があることを忘れてはならないだろう。それではその「次のシナリオ」とは一体何なのか?
この謎を解くカギは、なぜ米国は中国銀行を経由して北朝鮮への資金送還にこだわっているのかにあるのだろう。仮に、中国がこのスキームに応じたとする。そうなれば、しばらくは北朝鮮へ資金が無事に還流していくに違いない。しかし、ある時突然、米国はこう叫ぶだろう。―――「ちょっと待て!今度は中国経由で北朝鮮におかしなカネが流れていないか?」その瞬間、中国銀行は米国によって財務諸表の開示を求められ、丸裸にさせられるだろう。
その結果、どうなるのか?中国が隠しているのが、中国の主要銀行が抱えている巨額の不良債権である。ところが、よりによってハゲタカの筆頭格である米国に対し、「北朝鮮と一緒に悪さはしていません」という証しにすべての財務諸表を見せる中で、国家機密である不良債権の実態を示さざるをえなくなるかもしれない。
そうすれば、あとは米国の仕掛ける「チャイナ・バブル崩壊」まで秒読み段階に入るはずだ。はたしてそこまで飲み込まされるかわりに、中国が何を米国とディールするのかも気になる(イラン関連の利権である可能性が高い)。いずれにせよ、「チャイナ・バブル崩壊」は日本株マーケットを再び瓦落(がら)へと突き落とすはずだ。
世界は着実に次の「潮目」に向かって動いている。チャイナ・バブル崩壊のための仕掛けがこのような形ですでに見え始めていることに気付いているかどうか。それが明日も生き残る個人投資家を選別するためのカギなのだ。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
- ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト
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