相場復習ノート
日々、新聞やテレビをにぎわすニュースをきちんと理解できていますか?疑問を疑問のままにしていませんか?
現役証券アナリストが、ニュースを詳しく解説し、そこから学ぶべき株式相場で成功のヒントを伝授します!

株価はなぜ下がったのか〜上海発「世界同時株安」ドキュメント

07年2月27日、中国・上海市場の急落を発端とする「世界同時株安」が起こりました。前日まで、6年9ヶ月ぶりに1万8,000円の大台を突破するなど好調に推移していた日経平均も大幅な株安に見舞われました。

一体何が起こったのか?各国マーケットの動きを追ってみましょう。

バブル崩壊?10年ぶりの暴落【中国市場】

上海市場総合指数は、05年6月に998で底を打ったあと高騰を続け、07年2月26日には3,000の大台を突破しました。しかし、翌27日には一転急落し、前日比8.8%安の 2,771となりました。


その後は反発・反落を繰り返す展開。しかし、全体としては非常に軟調な展開といえます。


香港ハンセン指数も27日に1.76%の下げを記録。一時は持ち直したものの、3月5日には前週比4%の下落となるなど、株安の流れはアジアに広がりました。


これまで好調だった中国の市場がこれほど大きく下げたのは、中国政府が株式の売買益に対する課税を強化するとのうわさが流れたためです。課税強化の前に利益を確定させたい投資家の売りが殺到し、急落につながったのです。


そして、忘れてならないのが中国市場が「過熱」状態にあったということ。私も以下の通り、自身のメールマガジンの中で何度も中国市場の過熱を指摘してきました。


『中国、資産バブルなお警戒(07年1月26日付)』
中国株はすでにバブル的要素をはらんでいるような気がしてならない。


『焦点はどこまで上がるか?(07年1月30日付)』
本日の日経金融新聞『スクランブル』で取り上げられている『上がるか下がるかではない。焦点はどこまで上がるかだ』というメリルリンチ、新興株式市場担当のマイケル・ハートネット氏の見解は非常に“危険”に映る。


※詳しくはこちら⇒ http://blog.mag2.com/m/log/0000164032/


9.11世界同時多発テロ以来の下げ幅【アメリカ市場】

欧米の株式市場も上海発の株安の流れを引き継ぐ展開となりました。ロンドン市場FT株価指数の27日終値は、前日比148.6ポイント安の6286.1と急落。フランス、ドイツの市場でも大幅安となりました。


アメリカにいたっては、ニューヨーク市場のダウ平均株価が、前日比546ドル安の1万2,086ドルと、9.11同時多発テロ直後以来の下げ幅を記録しました。


欧米市場への株安の伝播は、上海の急落がヘッジファンドを中心とする巨額な資金を動かす投資家の心理を冷やしたことが要因です。そして、米連邦準備制度理事会(FRB)の前議長グリーンスパン氏の26日の発言が追い討ちをかけました。グリーンスパン氏の発言は以下の通りです。


"For example in the U.S., profit margins... have begun to stabilize, which is an early sign we are in the later stages of a cycle."


例えばアメリカでは、(企業の)利幅が横ばいになり始めている。これは(景気の)循環の後半にいる初期の兆候だ。


この発言が、「グリーンスパン氏、米景気後退の可能性を指摘」として広まりました。昨年来、アメリカの住宅着工件数が予想を下回るなど、元々景気減退への警戒感があっただけに、大きなインパクトを与えることとなり、大幅安となったのです。

1万8,000円の大台突破はひと時の夢?【日本市場】

上海を発端に、欧州、アメリカを巡った株安の流れは、当然、日本の株式市場にも直撃しました。


28日の東京市場では、前日の海外市場の株安の流れを受け、幅広い銘柄で売りが殺到。日経平均の終値は前日比515円安の1万7,604円と、あっさりと1万8,000円の大台を割り込みました。06年6月の614円以来の大きな下げ幅です。


元々、米市場の下げに連動することが多い日本市場。前日のニューヨーク市場が大きく下げていたので、ある程度の下げは予想できました。しかし、これほどまで下げ幅が大きくなったのは、このところの株高で、利益確定の売りが出たことも関係しているでしょう。


また、タイミングが悪いというべきか、28日の朝刊一面で「日興、上場廃止へ」との報道が流れ、証券株なども下落しました。


そして、世界的な株安とともに円高も進行。2月21日の日銀利上げ以降も1ドル120円台で推移していた円は、28日に一気に買われ118円台をつけ、3月5日には115円台に。対ユーロでも5日連続で続伸し、1ユーロ=151円半ばの展開となりました。


以前も述べましたが、通貨は国力を表す指標のひとつ。円高は望ましいともいえます。しかし、現在の日本経済が円安を背景に業績を伸ばす輸出産業に支えられている側面が強いため、円高の進行は株価を引き下げる要因となります。その結果、日経平均は5日までの1週間で1,570円近く下落したのです。


代表的な輸出銘柄であるトヨタ(7203)の株価をは、2月28日に前日比320円安の8,020円となり、3月5日には7,460円まで急落しています。


こうした急速な円高の背景には、円キャリー取引の縮小があります。


以前にも解説した通り、円キャリー取引とは、金利の安い円を調達し、利回りのよいほかの国で運用すること。円をほかの通貨に換える際に円売りが発生するため円安となります。2月28日以前の円安の大きな要因でした。


しかし、ここにきて投資家の心理が冷え込み、円キャリートレードを縮小、つまり、他国通貨の投資を引き上げ、円を返す(円を買う)という動きをみせたのです。これは、今後どうなるか不透明だから、とにかくポジションを解消してじっとしておこうということです。

投資のタイミングを読み解くヒント「騰落レシオ」

私は、当面は円安傾向が続くと考えていました。それは、たとえ日銀が利上げを実施しても、世界と比較すると日本の金利はまだまだ低く、円キャリー取引の縮小要因にはならないと考えていたからです。


しかし、実際は世界同時株安を受け、投資家のリスク許容度が減退してしまったのです。ここまでの動きは予想できませんでした。


では、今後の投資をどうすればよいのか。私は騰落レシオを参考にしながら投資を行っています。騰落レシオとは、上場企業の中で値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割って指数化したもの。簡単にいえば、投資参加者の心理が弱気に振れているか強気に振れているかを判断できる指標です。


騰落レシオはこちらで確認いただけます。


騰落レシオが75%を割ったときには、値下がり銘柄数が多く、投資参加者が弱気である、つまり株価が下落し割安局面となったと判断し、買う。一方で、130%を超えたときには、逆に値上がり銘柄数が多く投資参加者が強気であると考えられるため、売る。


私はこの投資方法をテレビや雑誌、書籍等を通じてお伝えしてきました。これは、自身のファンドマネジャーとしての経験や、計数的な検証から得られたノウハウです。


実際、年初より騰落レシオは110%から120%前後をウロウロしており、投資参加者の心理がまだまだ楽観的であることを示唆していました。そして、現在、88.9%となっていることから、もう一段の下落があってもおかしくはない、と考えています。逆に、75%割れまで待つのであれば、絶好の投資タイミングがやって来る可能性があると考えているのです。

たしかに、これだけ急激な下落を目の当たりにすると「怖い」と思う方も多いでしょう。一方で、より割安で投資するチャンスがやってきたともいえるのではないでしょうか。どう考えるかは、投資家それぞれの考えや経験、投資資金によっても変わってきます。


下落時期こそ、投資家の哲学が問われます。目をつむることなく、何が正しくて何が間違っていたのか、自省するタイミングではないでしょうか。

今日のポイント

下落圧力は上昇圧力よりも強くて早い、という経験を何度もしてきました。だからこそ、新日鉄が高値更新しようが、景気の良い話を聞こうが、年初より一貫して「弱気」とお話してきたのです。でも、もうすぐ「強気」に転じるタイミングが来る、と思っているのも事実。今は、騰落レシオという投資家の心理指標を参考に、いずれ来る投資タイミングを焦らず待ちたいところです。(木下)

 
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プロフィール

木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

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マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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