金融政策の司令塔不在の異常事態。混迷極める日銀総裁選びと株式市場
総裁不在、副総裁が代行の異常事態に
戦後初、日銀総裁が不在に――。そんなあってはならないことが現実のものとなりました。
3月19日昼の参議院本会議で、元大蔵次官で国際協力銀行総裁の田波耕治氏を次期日銀総裁に充てる政府案が、民主、共産、社民各党などの反対多数で不同意となりました。【ポイント1】
その結果、福井俊彦総裁の任期が同日で満了となるため、日銀総裁が空席という戦後初の事態となったのです。既に副総裁として元日銀理事で京大大学院教授の白川方明氏が同意済みでしたので、同氏が総裁の職務を代行することになりました。
金融政策の司令塔不在という異例の事態。しかし、課題は山積です。例えば、4月中旬には7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が予定されています。世界がサブプライム禍を何とか乗り切ろうとしているこのタイミングです。早急な打開が求められます。
国内外の懸念、批判の声
こうした事態を国民はどう見ているのか。日経産業新聞が21日、メールマガジン読者を対象に実施したアンケートによると、8割近くが、日銀総裁の空席は日本経済に「やや影響がある」「大きな影響がある」と懸念を示す回答をしたとのことです。
また、今回の事態の責任については、日経新聞が21〜23日に実施したアンケートでは、「政府・与党にある」が41%で、「野党」と答えた27%を大きく上回っています。また内閣支持率も31%と、前回2月の調査から9ポイントも低下。不支持率は6ポイント上昇の54%で内閣発足以来初めて5割を超え、07年7月の参院選前後の安倍内閣の水準に並んでしまいました。【ポイント2】
海外からも厳しい声が聞かれます。シンガポールのストレーツ・タイムズは「考えられないことが起こった。野党が受け入れられない人物を二度も推した福田首相に明確な責任がある」と批判。「(金融システム危機などへの対応に追われる)世界は、日本の足並みの乱れを受け入れる余裕はない」とも指摘しています。
また米ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、金融市場の混乱が続く中、「世界第二の経済大国の中央銀行トップ不在は投資家心理を悪化させかねない」と懸念する記事を掲載しました。
“不信”が招く記録的な水準の日本売り
日銀総裁の不在という異常事態が、株式市場にどのような影響を与えるのか。その一例が外国人投資家の動向でしょう。
東京証券取引所が21日発表した、3月第2週の外国人投資家の日本株売越額(東京、大阪、名古屋3市場)は9,226億円でした。これは1987年10月第3週ブラックマンデー時の1兆1,220億円に次ぐ、過去2番目の規模です。混迷極める日本に嫌気した外国人の「日本売り」が、記録的な水準に達したといえるでしょう。【ポイント3】
ウォールストリート・ジャーナルは3月20日の記事で、日本の株式市場の悪化理由に「小泉純一郎のようなリーダーの不在」を挙げ、「日銀総裁も決められないでいる弱体政権」との不安を払拭する必要性を指摘していました。
今回の事態ついては、「野党を納得させられなかった与党に責任がある」「では、野党は最適な代替案を持っていたのか」など様々な意見があるでしょう。確かに、誰が総裁に適任なのかとの問いは、簡単に答えられるものではありません。
しかし、世界金融が混乱し、G7を目前に控えた待ったなしのタイミングです。与野党とも、事態打開のための最善を尽くすべきです。
また、新しく就任する総裁にとっては、まさに「いばらの道」といえる状況でしょう。しかし、“マエストロ”の異名を持つグリーンスパン前連邦準備制度理事会(FRB)議長も、就任当時は酷評されたものです。
私たちは、異常事態が早期に収拾されることの望み、就任する新総裁に対して、まずは信任の姿勢をとることが必要なのではないかと思います。
- 【ポイント1】
- 日銀総裁人事が政争の具として扱われてしまったことに、金融市場関係者として非常に歯がゆい思いをしています。これだから、日本は世界から金融立国としての地位を奪われていってしまうのだ…と考えずにはいられません。政治家は、「世界の目」をもう少し真摯に受け止める必要があるのではないか、と思います。代替案なき批判は、単なる愚痴としか聞こえません。
- 【ポイント2】
-
政治不信という言葉を、私たちは何度聞けばいいのでしょうか。どの国にも政治に対する不信はあるのかもしれませんが、日本は与党、野党共に精彩を欠いている状況です。
企業経営で最も怖いのは、社員の離反ではなく、社員が「しらける」ことだとある経営者に伺ったことがあります。政治に対して「しらけている」日本の現状は非常に危険なことのように思います。 - 【ポイント3】
- 外国人投資家は、政治状況を重要な投資判断の材料のひとつと考えます。であれば、この状況では、外国人投資家が日本市場を敬遠しても仕方がないでしょう。05年、日本の株価が急騰したのも、政治的リーダーシップにより、構造改革が進むであろうという展望を、外国人投資家が好感したからです。
いつまでたっても変わらない日本を見捨て、海外に目を向けるようになった日本の投資家も多いようです。実際、私も2月にインドを訪問し、4月にもベトナム、タイを訪問します。海外への投資を真剣に検討するタイミングがやってきているように思います。(木下)
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日本銀行を作ってほんの一世紀しかたっていないし、そもそも日本銀行などいらない。日本に対して、日本銀行は悪事しかしてこなかった。彼らはヒトの生命よりもモノをだいじにしてきたのだ。現在の不況の最大の犯人は日本銀行である。日本政府によって何の罪もないのに強制的に監禁虐待されてきた新井泉さんこそ総裁にふさわしい。公務員による残酷な檻に閉じ込められて人生も健康もすべて強制破壊させられた新井泉さんを招いて総裁にするべきである。日本政府と日本銀行員は共謀して新井泉さんを拷問監獄に閉じ込めて、彼らの好きな時にいつでも殺せるのだぞと新井泉さんに対して長いあいだ恐喝や脅迫を続けている。新井泉さんは一生毎日拷問や虐待を受けて公務員や銀行員のクイモノにされるために生まれてきたのではなく、極悪人のクイモノにされる気は全くない。彼らがいつでも殺害できるような最悪の拷問部屋で新井泉さんを強制破壊しても、神である新井泉さんはますます神の御業を執り行って、邪悪な日本人どもに復讐する。てめえだけ虐待する側について長いあいだ栄耀栄華を楽しんでいる日本政府及び日本銀行側は、新井泉さんを総裁に就任させるべきだ。
2008年04月04日 12:21 | ゆいな
木下晃伸(きのしたてるのぶ)
経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。
投資脳のつくり方
マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。