『国際政治経済塾』
投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

「瓦落」の中から浮かび上がる円を見落とすな!

異様に持ち上げられる新興市場国たち

10月19日に開催されたワシントンG7会合。ますます不安定化していくマーケットに対する処方箋を提示してくれるのかと思いきや、当たり前の「情勢認識」を羅列して終わってしまったようだ。


それを踏まえた無力感・喪失感からだろう。週明け22日の東京株式マーケットは全面安の展開。時に平均株価ベースで500円を超える下げとなり、再び「悪夢」がよぎる状況が再来した。


「悪夢」とは何か?今年になって2月末、そして8月半ばと2度にわたって既にマーケットを襲った「瓦落(がら)」である。


もちろん、「瓦落」自体は悪でも、正でもどちらでもない。実際、前回の「サブプライム・ショック」(8月中旬)の結果、米系の「越境する投資主体」の雄であるゴールドマン・サックスは莫大な利益を得たことが知られている。並居る投資銀行やファンドたちが続々減益となったのに対し、同社は6−8月期でむしろ巨額の収益増となったのだ。考えてみれば、「瓦落」が来ることが分かっている人間にとってみれば、「瓦落」ほどてっとり早く集金出来る瞬間はない。ショート(空売り)で一気にかすめ取ることができるからだ。


ただし、そのためにはマーケット、いや、金融資本主義化した世界全体の本質である「情報」に肉薄した立場にいる必要がある。また、今ほど情報を読み解く能力(情報リテラシー)が必要とされている時はない。まさに、金融資本主義とは「選別」の世界でもあるのだ。


そんな中、米国もダメ、欧州もやや危険といった風説がどこからともなく流されつつある。その代わりに、「新興市場国こそ、世界経済のけん引役だ」といった議論が流されつつもある。結果として、世界中から行き場を失ったマネーを吸い取っているのが中国マーケットだ。しかし、その先には一体どんな結末が待っているのか?

次の「瓦落」について欧米の賢者たちは何と言っているのか?

このことを考えるのに適した記事が、ドイツの有力紙で2本掲載された。1つは10月20日付フランクフルター・アルゲマイネ紙の記事、そしてもう1つは同22日付ディ・ヴェルト紙の記事である。


前者は、ゴールドマン・サックス本社のチーフ・エコノミストであるジム・オニール氏とのインタビューを掲載したものだ。この中で同社の表の「頭脳」ともいえるオニール氏は、「ユーロ高一辺倒が続くわけではなく、今後のG7の対応如何ではドル高へ転換することもある」と発言。もっとも、それでも最有力なのは欧米マーケットではなく、新興市場国、とりわけブラジル、それに中南米だと断言する。


これに対し後者は、1987年のNY株式市場急落である「ブラック・マンデー」をピタリと言い当てたことで有名なドイツの銀行家、ローランド・ロイシェル氏とのインタビュー。同氏はかねてより2007年末に「瓦落」が到来すると予測。何とその際、欧米マーケットはともに時価総額が平均株価ベースで半分になるのだと断言する。それではいったい何を買うべきなのかというと、「ユーロと金(ゴールド)」なのだという。またドイツ市場ではすでにショートポジションを取っているのだとも明言する。


さて、これら2人の「賢人」たちの言葉から、私たち=日本の個人投資家は、いったい何を読み取ればよいのだろうか。

「円高」時代に備えた投資戦略とは?

端的にいえば、上記の2人の賢人が一致している点が1つある。それは、どういうわけか「円」について一切触れていない点だ。2人とも、ドル安が進行するかどうかだけを云々し、それとの比較でユーロは高くなる、いや一本調子とはならないなどと議論するだけだ。


しかし、特に欧州勢が盛んに議論しているのは、日本の輸出産業にとって追い風となってきた「円安」の是正、そしてそのための日銀による金利引き上げではなかったのか?また、米国でも自動車産業からのロビイングを受けて、日本の自動車メーカーによる「儲け」への批判が高まりつつある。そこでもまた、「円安是正」が声高に語られつつあるのだ。実は年内に「対日貿易不均衡に関する公聴会」を米国議会で行うべきだという声すらある。


したがって、これから相対的に見て価値が上がるのは、他でもない「円」なのだ。しかも、遅くとも来春までをめどに「金利」が上がるとの見方も強い。また、円が引き上げられる口実として、ドル安への転換が行われ、同時に中国の人民元も「切り上げ」となることであろう。すると中国マーケットにとって重石となることは間違いない。これもまた「瓦落」にスパイスを加える展開だ。


その結果、いったい何のセクターが上げ調子となっていくのか?その見極めができるか否かが、どうやら、私たち=日本の個人投資家にとって、情報リテラシーを身につけた「新しい中間層」へと旅立てるかどうかの「試金石」となりそうである。福岡(11月10日)・広島(11月11日)で開催する情勢分析セミナーでは、この点も含め、中国バブル第一次崩壊という「瓦落」に向けた最新事情の分析について、私なりの考えをじっくりと述べ、聴衆の方々と一緒に考えてみたいと思う。

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筆者プロフィール

名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表
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