『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

21世紀のオイル・ラッシュ?米国の魂胆

原油高の背景

原油価格が歴史的な高騰を続けている。投機資金の流入により、価格が不当に吊り上げられているといわれているが、巷では、需給バランスの不均衡が原因だという声も根強い。特に米国は一貫して産油国が増産しないからだと主張してきた。


需給バランスの不均衡とは、供給側であるOPEC諸国が増産することに消極的で、あまり原油の生産量を増やしてこなかったことを指している。それに、中国やインドなどの新興経済諸国が急速な経済発展を遂げている中、これらの国々からの需要が増えて価格が上昇しているという意見も多い。


だが私は、これらの意見に懐疑的である。中国やインド経済の成長率は鈍化し始めている。それでも依然として続く原油価格の異常なまでの高騰ぶりを説明し尽くせるとは到底思えないのだ。


したがって、昨今の原油価格の高騰は、やはり投機筋による影響が強いと言えるだろう。そもそも先物市場の市場規模は現在約1,500億ドル規模と小さい(株式市場は2005年時点で約41兆ドル)。日本のメガバンクなら、市場そのものを買い上げてしまえるほどなのだ。

実は大量にある?原油

そんなことを考えていたら、1つのニュースが飛び込んできた。既に莫大な埋蔵量を持つイランでまた1つ、5億バレルの油田が発見されたというのだ(7月22日付イラン国営通信)。ブラジルでも油田の発見が報じられたばかりだ。こうした情報を見ていくと、果たして石油は本当に“希少な”資源なのか、疑いたくなる。そこで石油開発の歴史を紐解いてみよう。


世界で最初に発見された油田は、実は米国にある。ペンシルバニア州で1859年に発見された油田である。その後、1900年頃から世界中でオイル・ラッシュが続いた。だが、原油が発見されても、地元で大きな需要があるわけではなかったので、おのずから米英の石油資本は「資源争奪戦」から、徐々に「市場争奪戦」へと転じていった。この辺の事情は、『IISIA歴史叢書 第2巻』で詳しく述べているので、ぜひお読みいただきたいが、とどのつまり、石油開発の歴史とは、油田を見つけることではなく、石油を消費してくれる相手を見つけることなのだ。


日本にも少なくない量の原油が埋蔵されており、資源エネルギー庁が2000年に公表した資料(「国内石油・天然ガス基礎調査 検討ワーキンググループ検討結果」)

によれば、1955年度から97年度までに生産された原油量と、97年度末における原油の残存可採埋蔵量の合計は約2億4,975万4千バレルあるという。


ちなみに、敗戦後の日本を統治したGHQが日本で真っ先に行ったのは、何を隠そう、油田に関する調査だった。この調査の結果、GHQは、日本国内の原油増産につながる新たな埋蔵石油の発見の可能性がいまだに残されていることを明らかにしている。


そして、今年4月には、米国地質調査所(USGS)の調査によって、ミシシッピ州近郊のバッケンという岩層(Bakken formation)に、36億バレルの原油と1兆8,500億立方フィートの天然ガスが埋蔵されていることが明らかになった。


以上の事実から、隠された油田がこの地球上にはあり、特にそれを知っている米国は、いざという時までそれを“とっておこう”としているのではないかと考えられるのだ。

米大統領選前に空前のオイルラッシュ!?

この点も含め、今後想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”について私は8月2・3日に札幌・仙台、そして8月30・31日に大阪・名古屋でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。


投機マネーの流入や中東問題による原油価格の高騰。だがそうした高騰も、明らかになりつつある米国の豊富な原油埋蔵量によって、11月に行われる米大統領選前に大きく局面転換する可能性がある。


かつて米国では、19世紀半ばにゴールド・ラッシュが起こり、当時未開拓であったカリフォルニア州を目がけて大勢の人間が殺到し、大きな経済的発展のきっかけとなった。


そして、この21世紀、米国で秋の米大統領選に向けた新たな胎動がすでに始まっている。サブプライム・ショックの痛手から立ち直れずにいる米国経済。その景気を浮揚させるため、エネルギー安全保障を理由として、埋蔵油田をタネにゴールド・ラッシュならぬ「オイル・ラッシュ」が起こる可能性もあるのだ。原油高、インフレが騒がれているが、その先の「大転換」で動くマーケットにどう備えるか、それこそが日本にいる私達が考えるべきことだろう。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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