『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

米国金融規制改革の行方に見るマネーの“潮目”

米国金融規制改革の後退

昨年(2008年)9月のリーマン・ショックを契機とする世界金融危機から1年が経過し、世界中で景気下げ止まりないしは金融危機の終焉(しゅうえん)を匂わせる金融当局の発言が散見される。この背景には、株価の持ち直しや経済統計指標等の改善が挙げられるが、必ずしも実態経済を反映しているとは言い難い。


サブプライム・ローンやCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などを複雑に組み合わせた金融商品を引き金とする世界金融危機の失敗を二度と犯すまいと、オバマ政権は金融規制改革に取り組んでいる。しかし、9月8日に米国連邦議会が再開したにもかかわらず、金融規制改革法案の審議は遅々として進んでいない。というのも、米国議会では、オバマ政権の「一丁目一番地」である医療保険(ヘルスケア)改革法案や気候変動対策など、年内に審議が予定されている法案が目白押し。さらに、共和党を中心として、金融規制改革法案に強硬に反対する議員も少なくなく、年内の同法案成立が危ぶまれているのだ。


また、オバマ大統領が提示する金融消費者庁(CFPA)の創設について、ウォール街の金融界の反発も根強い。さらに、政府は当初中央銀行に相当する連邦準備理事会(FRB)に監督権限の集中・強化させるという案を提出したが、共和党勢からの反発もあり、むしろ関連省庁による集団監視体制を強化する案が浮上するなど、金融規制改革が後退しつつあるのだ。


これを裏付けるものとして、1日、バーナンキFRB議長が議会証言で「業態を超えた金融システム危機への対処などは(FRBの)処理能力を超す可能性がある」と述べたことが挙げられる。これは、FRBに権限を集中させる政府当初案から距離を置く姿勢をとることを示唆したと言えるだろう。


果たして、オバマ政権は本当に金融規制改革法案を成立させることができるのであろうか。

オバマ政権が四面楚歌に

このような観点から東京・国立市にある当研究所で世界の“潮目”をウォッチしていたところ、次のような気になる報道が地球の裏側から飛び込んできた。


9月30日、金融規制改革法案を審議する上院銀行委員会のドッド委員長が、同法案の上院本会議での最終可決が来年(2010年)になるであろうとの発言を行い、同法案が年内に成立するのが困難であるとの見解を示したのだ(10月6日付 米国ザ・ヒル・ドット・コム参照)。


金融規制改革法案が連邦議会だけでなく金融界からも反発を食らっている中で、身内の民主党所属のドッド委員長からも半ばさじを投げられたといっても過言ではない。


金融規制改革法案の年内成立の見込みが立たないものの、その場しのぎではあるが、同法案に反発する勢力との妥協を図った「骨抜き」の内容で年明けの成立を企図し、2010年11月の中間選挙を意識した「実績作り」を狙う選択肢もあろう。だが、オバマ大統領が提示する金融規制改革案に端から反対するロビイストは、妥協案でさえ受け入れ難いとする向きさえもある。


加えて、9月29日、米上院財政委員会はヘルスケア改革法案に公的保険の創設を盛り込む案を否決。そして注目すべきは、そこで反対票を投じた人物の中には、やはり身内の民主党議員であるボーカス委員長も含まれているということだ。


こうして、共和党だけでなく、金融界、さらには身内の民主党、米国民からも愛想を尽かされているオバマ大統領。まさに“四面楚歌”といった状況だ。

「二度と騙されない日本人」が「底力」を発揮するとき

このようなオバマ政権の不安定化を含め、マーケットとそうした状況を取り巻く激動の世界を巡る情勢について私は、来る10月17日に大阪で開催する「IISIAスタート・セミナー」でお話する予定だ。関心を持たれた方々にはぜひ会場に足をお運び願いたい。


7日、米議会予算局(CBO)は、2009年会計年度(9月30日終了)の米国財政赤字が過去最大の1兆4000億ドルに達すると見込んでいることを公表した。これは2008年度の財政赤字4,590億ドルをはるかに上回り、2009年度の国内総生産(GDP)の実に9.9%に相当する数字である。米国財政は非常に危機的な状況に陥っているのだ。


この背景には、世界金融危機に伴う景気後退による税収減もさることながら、不良資産救済プログラム(TARP)関連費用、ファニーメイ・フレディマックの救済コスト、大型景気対策、失業手当など歳出面で多額の費用が嵩んだこともあるだろう。その結果、米国の財政赤字が累増し、ヘルスケア改革成立となれば、米国連邦政府の財政に更なる負担をもたらす可能性が高い。そのため、米国連邦政府は、躊躇なく米国債を増加させるだけでなく、中国など世界各国にこれをあてがうことにより、自国の糊口をしのいでいるほどの窮状だ。


こうした状況を踏まえると、米国の“デフォルト”(国家債務不履行)がまさに到来しようとしているといえよう。


そうした中、日本では10月8日付で気になる報道がなされた(10月8日付 毎日新聞参照)。2008年8月下旬、日本政府が外貨準備を使って、経営危機を迎えていた米政府系住宅金融機関2社の支援を検討していたというのである。このことからは、当時、明らかに危機的状態にあった米国経済を支援するため、日本人の富が吸い上げられようとしていたことがうかがえよう。


そして現在、また米国経済が危機的状態にあるにも拘らず、日本の多くのマス・メディアは米国の政策当局者の楽観的な発言や表面的な経済統計指標の改善のみを取り上げて、世界金融不況は終焉したなどと伝えているのである。更にこうした報道を追いかける形で、日本の金融機関も、「お金は銀行に預けるな」や「貯蓄から投資」といったリーマン・ショック以前によく用いられた掛け声を再び喧伝している。私たち日本人の金融資産を吸い上げようとする動きが再びうごめき始めているかもしれないのだ。


だが、その先にあるのは、米国の“デフォルト”による再びの混乱であり、バブル経済や投信ブームと同じ轍を踏むことになろう。私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンは、こうした過去の教訓を活かすことにより、「二度と騙されない日本人」として再び立ち上がる「底力」を発揮する時が来ているのである。そのために、国際政治・経済の真実の姿を確実に捉える能力、つまり「情報リテラシー」を高める必要がある。


当研究所は皆様の「情報リテラシー」の入門講座として、来る10月24日、IISIA調査部の研究員による「IISIAフレッシュ・セミナー」の第1回目を東京・銀座で開催する運びとなった。IISIAのマクロ経済分析のエキスパートである調査部研究員が皆様の前に出る機会に、ぜひご参加いただければと思う。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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