投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
巨額のマネーを東京に移す米国勢が仕掛ける“潮目”とは?
ガイトナー米財務長官訪日の秘められた目的
10日、ガイトナー米財務長官が訪日した。公式発表がなされたのは去る4日である。この公式発表をキャリーした本邦各メディアによれば、ガイトナー米財務長官は「初来日する」とある。もっとも公開情報インテリジェンス(OSINT)を生業とする立場からすると、実はこの段階から情報の読み解きが問われていることに気づかなければならない。「初来日」だから、きっとまずは物見遊山が目的なのであって、それほど深刻なテーマについて話し合いがいきなり繰り広げられることはないだろう、などとはゆめゆめ思ってはならないことに気づくべきなのだ。
なぜならガイトナー財務長官は、1990年代に東京にある米国大使館で財務担当として勤務した経験を持つ、いわゆる「ジャパン・スクール」の外交官としての顔も持ち合わせているからだ。当時は米国国内の政争もあり、現在のガイトナー財務長官が東京に着任早々、本来ならば上司であるはずの人物(公使)が緊急帰国。実質的に米国大使館と日本の大蔵省との間を取り仕切る立場にいきなり置かれたことでも知られている。
そのような自他ともに認める“日本通”のガイトナー財務長官が、ヘルスケア改革やら金融規制改革で忙しい中、わざわざ自ら来日するというのである。「これは何かある」と考え、身構えた上で分析をしなければこの訪日に秘められたマネーの“潮目”は見えてこないのである。もちろん今回の訪日は去る10月20・21日に行われたゲイツ国防長官による来日に続き、間もなく行われるオバマ大統領の訪日(11月12・13日)の“露払い”“前さばき”であることは間違いない。しかしそういった外交上の1シーンという意味合いを超えて、ガイトナー訪日には「今だから行われるべき」という隠された意味合いは無いのだろうか。
始まった米系“越境する投資主体” の雄に対するバッシング
このような観点から東京・国立市にある 当研究所で世界の“潮目”をウォッチしていたところ、次のような気になる報道が、地球の裏側から飛び込んできた。米系“越境する投資主体”の雄として知られるかのゴールドマンサックス社に対して、米民主党系の有力地方紙として知られるマクラッチー紙が今月1日より「一斉攻撃」を始めているのである(1日および3日付 米国 同紙参照)。マクラッチー紙といえば、ニューヨークタイムズ紙やワシントンポスト紙よりも規模こそ小さいものの、念入りに調査したルポルタージュを掲載し、しばしば大きな波紋を世界全体に対して巻き起こすことで知られているメディアだ。「ゴールドマンサックス社はどのようにしてサブプライム危機の中で儲けたのか」「同社は外国系金融機関に対しケイマン諸島経由で危険と分かっているモーゲージ債を売り飛ばした」など刺激的な内容が今回もつづられている。日本の大手メディアは一切報じることはないものの、巨大な“潮目”が同社、そして“米系越境する投資主体”全体に対して生じていることは間違いないであろう。
ここで思い出して頂きたいことがある――昨年(2008年)秋に起きたリーマン・ショックの際のことだ。「なぜ我々だけがこのような目に逢わなければならないのか」と当時、同社のCEOが議会証言の際、憮然(ぶぜん)とした表情を見せたことは今でも記憶に新しい。もちろん、表向きの理由はいくらでもあった。だが、重要なのはあの時、それなりの米系“越境する投資主体”がとにもかくにも血祭りにあげられないことには“世間様”が納得しなかったということなのである。つまり金融メルトダウンが深刻さを増すにつれ、それに応じた犠牲が生じる以上、それなりのスケープゴートが用意されるという仕組みである。
このように考えを進めた時、どうしても気になることがあるのだ。それは今、新たに生じている米系 “越境する投資主体” の雄を巡るバッシングは、実のところ、金融メルトダウンがいよいよ“最終局面”を迎えるにあたって彼らがついに史上最大のスケープゴートにされる可能性があることを意味しているのではないかということである。無敵で知られる“越境する投資主体”も、投資銀行よりランク的には下のヘッジファンド勢から順に刑事訴追の対象となる例が米独で相次いでいる有様なのだ。そうした「潮目」がやがては“本丸”とも言うべき米系“越境する投資主体”の雄に達しないと誰が断言できようか。いや、もっと正確に言うと「これから起きること」が想像を絶する規模であればあるほど、その最終解決はこれら“越境する投資主体”が生贄(いけにえ)になって初めてもたらされるべきものなのかもしれないのである。
米国勢が狙いをつけているのは他ならぬ日本だ!
このように日本の大手メディアは全く報じないものの、地球の裏側で現在、着実に生じつつある巨大な“潮目”の予兆について、私は 来る11月15日に大阪で行う「IISIAステップアップ・セミナー」、そして11月28日に福岡で開催する「IISIAスタート・セミナー」(いずれも無料)でじっくりとお話する予定だ。“これから起きる本当のシナリオ”を知りたい方は今すぐお申し込みの上、ご参集いただきたい。
実のところ、弊研究所は去る8月下旬の段階でとある非公開情報をつかんでいた。――「米系“越境する投資主体”の雄が巨額の資金をニューヨークから東京へと移動させている。しかもその金額が半端なレヴェルではない。それこそニューヨークから本拠地を東京へ移すのではないかとまで思えるくらいの規模だ」。
金融メルトダウンが“最終局面”を迎え、しかもその中で自らがスケープゴートにされることがあらかじめ分かっているのだとすれば、米系“越境する投資主体”はみすみす座して「死」を待つほど愚かではないであろう。生き延びるためにはまず、米国という囲いを超え、文字通り“越境”してしまうことが必要なのである。だが、ここで問題が一つ生じるのだ。「いったいどこへ逃げれば良いのか?」。
ここに、ガイトナー財務長官による来日を巡る一つの大きなカギがあると私は考えている。同財務長官が“露払い”をし、“前さばき”をする相手。それはオバマ大統領だけではないかもしれないのだ。
やはり「最後に選ばれたのは日本」だったのであり、米国勢の狙いは郵政民営化を巡る議論が華やかなりし2005年ころより何ら変わってはいなかったのである。若く、颯爽としたガイトナー財務長官。そして初の黒人大統領であり、変革(CHANGE)を叫んで颯爽と登場したオバマ大統領。彼らの笑顔に騙されてはならない。その意味で、奪われ、疲れ果てたものの、それでもなお生き延びていかなければならない日本の個人投資家とビジネスマンの“情報リテラシー”が今こそ問われているのである。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
- ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト
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