『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

米国“好景気”の陰でオバマ大統領が狙う“外交ポイント”

演出された米国 “好景気”

米国の2009年第3四半期GDP統計速報が発表された。事前予想は対前年同期比3.2%成長であり、発表直前にはゴールドマンサックスが予想を同+2.7%に下方修正していた。しかし発表された数値はこれらを超える、同3.5%の拡大であった。これを受けて10月29日のニューヨーク株式市場は反転、上昇に転じた。10月30日現在、再度10,000ドルの大台をうかがう展開となっている。


だが、表面上の“好景気”とは裏腹に、その“実情”に対しては広い範囲から疑問が投げかけられている。今回のGDP成長には個人消費の拡大が大きく寄与しているが、それは自動車買替え促進策や住宅購入減税といった、政府による消費拡大策が効を奏したものと思われる。しかし、その自動車買替え補助金制度は終了し、住宅購入減税もこの11月には期限が切れる。今四半期(2009年10〜12月期)以降はその“メッキ”がはがれることが予想されるのだ。


米国の実体経済が依然、こうした政府による景気刺激策頼みの状況下にあるからには、オバマ政権としては継続的に策を講じていく必要がある。前々回のこのコラムで触れたアフガニスタンへの大規模追加派兵も、その一環として認識されるべきであろう。しかし、イラクにおける戦争がITバブル崩壊後の景気低迷から脱する契機となったように、軍事活動による景気刺激は海外からの信認低下や財政赤字の際限なき拡大といった副作用を持つ「劇薬」なのである。この点には十分な注意を払う必要がある。

アフガニスタンで盛り上がる“反米”論調

このような観点から東京・国立市にある当研究所で世界の“潮目”をウォッチしていたところ、次のような気になる報道が、地球の裏側から飛び込んできた。


アフガニスタンのカルザイ大統領が突然、パートナーとしての米国の“信頼性”に疑問を発したというのだ(10月26日付 米国ワシントン・タイムズ参照)。また、カルザイ大統領の弟であるアハメド・ワリ・カルザイ氏が、長期に渡り米CIAから資金を得て麻薬ビジネスを行っていたとの報道が為された(10月27日付 米国ニューヨーク・タイムズ参照)。


このような“反米”発言や、米国の信認を貶めるような情報の“リーク”が続く背景には、オバマ政権の求心力低下があると思われる。


カルザイ大統領は元来、米石油メジャーのシェブロンとの関係も噂されていることに見られるように、米共和党、中でもブッシュ一族をはじめとする石油利権組と太いパイプを持つ存在だ。オバマ民主党政権によるアフガニスタン増派を、必ずしも快くは思っていないだろう。


こうした“反対勢力”の活動によって、米国のアフガニスタン作戦は難航する可能性がある。それが失敗に終わった場合、外交においてマイナス・ポイントとなるのみならず、帰還兵の失業増加という形で内政においてもさらなる問題が生じることになる。

追い詰められるオバマ民主党政権が狙う“外交ポイント”

このように混迷を深めつつある米国の内政・外交をはじめ、激動の世界を巡る情勢について私は、来る11月8日に京都で、11月28日に福岡で、それぞれ開催する「IISIAスタート・セミナー」でお話する予定だ。関心を持たれた方々は、ぜひ会場に足をお運び願いたい。


ちなみに11月3日には、ニュージャージー州及びヴァージニア州で州知事選挙、ニューヨーク市において市長選挙が行われる。特に前者は、来年(2010年)行われる予定である中間選挙の前哨戦として位置づけられるが、事前調査では共和党有利との結果が出ている。


オバマ政権に対する米国民の支持は、長期低落傾向を続けている。最近の調査では支持率が50%を割るものが多く、不支持率(40%強)に近い水準にまで落ち込んでいる。目下懸案となっている、民主党の悲願たる保険制度改革法案の下院議会審議入りが控えていることもあり、オバマ大統領としては、“逆転の一手”が欲しい状況なのである。


それかあらぬかこの11月中旬、オバマ大統領は日本と中国を相次いで訪れる。ここで外交ポイントを稼ぐのが目的の一つであると考えられよう。


中国当局は10月29日、米国製自動車の反ダンピング調査を始めたと発表した。このことから、オバマ大統領の訪中に際して“通商交渉における一歩前進”という演出が為される可能性が見て取れる。では、わが日本の鳩山民主党政権はオバマ大統領にどのような“お土産”を用意しているのだろうか。お手並み拝見といったところである。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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狙われた日華の金塊

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