年頭の準備でチャンスを先取り〜年投資カレンダー

あけましておめでとうございます。新年第1回は、“07年投資カレンダー”と銘打って、私が重要だと考える07年のイベントを紹介し、それを株式投資にどう結びつければよいかをまとめてみました。

事前に何が起こるかを把握し、仮説を立てれば、絶好の投資タイミングを見つけることができるかもしれません。たとえその仮説が外れても、なぜ外れたのかを検証し、次の投資に役立てることができます。

では早速、1月からみていきましょう。

年明けは電器・IT関連に注目が集まる?

1月−米マイクロソフトが次世代OSビスタを発売
2月−電機大手6社共同出資のテレビポータルサービススタート
1月末、米IT業界の雄マイクロソフトが次世代OS「ウィンドウズ・ビスタ」を一般向けに発売、2月には日本の電機大手6社が企業が共同で、テレビポータルサービス「アクトビラ」をスタートさせます。

ビスタは、「ウィンドウズXP」の後継OSで、デスクトップ検索が強化されたなどの機能の追加がありました。しかし、その他にXPと比べて目立った違いはなく、新しいインターネットブラウザ「Internet Explorer 7」も、タブブラウザ機能を取り入れたぐらいで、大きな変化はありません。

そのため、ビスタに対して期待はずれとの声も聞かれます。しかし、マイクロソフトのクリス・リデル最高財務責任者(CFO)は、ビスタの発売で07年6月期の同社売上高は「前期比13−15%増える」と発言。また、米IT業界には約700億円の増収効果をもたらすとしています。

一方「アクトビラ」は、松下(6752)、ソニー(6758)、シャープ(6753)、東芝(6502)、日立(6501)といった日の丸連合が威信をかけて設立したテレビポータルサイト。ブロードバンド接続機能のあるデジタルテレビ向けの「共通テレビポータル」として、立ち上げ当初は画像とテキストで生活関連サービスを提供、07年度中に映像配信を開始するとしています。

マイクロソフト社の見通しの通りであれば、ビスタの発売が米株式市場を活気付けることでしょう。アクトビラが好調に推移すれば、関連産業も盛り上がるはずです。

しかし、ビスタに関しては、06年11月に企業向けに発売されたものに安全面での欠陥が見つかったとの報道もあります。盛り上がってはいるものの、結局は期待はずれに終わってしまうかもしれないという不安も捨て切れません。年初は電器・IT関連ニュースをしっかりと追いかけるべきでしょう。

新年度スタート、政治・経済関連ニュースが目白押し

4月−12都道府県で統一地方選挙
5月−外国企業による合併・買収が容易になる「三角合併」解禁
6月−主要国首脳会議(サミット、ドイツ・ハイリゲンダム)開催
この3ヶ月は、3月期決算企業の決算発表が本格化し、その結果に株価が大きく影響を受ける時期です。

そして、今年は4月に統一地方選挙があり、6月にはサミットが開かれます。こうした政治的イベントは経済の根本部分にかかわるものですので、しっかりと、その結果を見届ける必要があります。

また、5月には外国企業が日本の子会社を通じて日本企業を買収する「三角合併」が解禁されます。外国企業による日本企業の合併・買収が容易になるため、時価総額が低い企業が買収の対象となる可能性が高くなります。

06年は、王子製紙(3861)が仕掛けた北越製紙(3865)への敵対的買収など、日本でも企業の買収・合併が多くみられました。07年は、外国企業も加わり、さらにその流れが加速することでしょう。

そういった状況の中、どのような投資基準を持つべきなのか。ひとつの判断基準は「時価総額1兆円」です。時価総額1兆円を超える企業を買収する資金は、欧米の時価総額が大きな企業であっても、そう簡単に調達できないでしょう。逆に、そうでない企業であれば、欧米企業が本気になれば、買収も可能ということです。

例えば、日本精工(6471)やTHK(6481)などの半導体製造などに必要不可欠な部材を作っている機械メーカーや、鹿島(1812)や大成建設(1801)といった大手ゼネコンなどの時価総額は5,000億円程度。欲しがる外国企業は多いでしょう。

そう考えると、企業買収の影響に翻弄されない投資を目指すのなら、すでに時価総額が1兆円を超えさらなる成長をめざしている企業や、現在は1兆円未満でも今後1兆円を超える可能性がある企業を、投資対象として考えるべきかもしれません。

サッカーアジア杯開催

7月−サッカーアジア杯
9月−高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」開業
7月にはサッカーアジア杯が開催されます。オシムジャパンになってから初の国際大会ということもあり、日本国中の注目を集めそうです。

サッカーをはじめ、オリンピックなどの大きなスポーツ競技のたびに、液晶テレビやプラズマテレビの需要が伸びることを予想し、関連企業の株価が上がることがあります。

07年7月には、松下電器産業の世界最大規模のプラズマディスプレイ・パネルの工場(兵庫・尼崎)が稼動し始める予定です。アジア杯以降も薄型テレビ需要が全世界的に拡大することを予想した動きといえるでしょう。

松下といえば、06年末に子会社である日本ビクター(6792)を売却する方針と報道されました。そのビクターは、02年に日本でワールドカップが開催されたとき、日経平均株価が大きく下落する中、好調な薄型テレビ販売により大幅増益となり、株価も3倍に跳ね上がりました。スポーツイベントは株価を占う上で無視できない存在なのです。

9月には、東京・有楽町に高級ホテル「ザ・ペニンシュラ」がオープンします。景観を変えるほどの大規模な施設の建設は、その土地の不動産価値を引き上げることがあります。

たとえば、JR大阪駅北側の「ヨドバシカメラ梅田店」です。ヨドバシカメラの出店で、大阪駅前の人の流れが変わり、地価上昇に一役買ったといいます。

今後、東京都心には外資系ホテルが続々とオープンする予定です。それらは、不動産価値が上がる要因にもなるため、不動産が投資テーマとしての重要さを増す可能性があります。

金融が大きなテーマに

10月−日本郵政公社民営化、郵便貯金銀行など発足
12月−銀行窓口での保険商品販売が全面解禁
10月に日本郵政公社が民営化されます。

06年末には、日本郵政公社で投資信託の販売がスタートしたことを受け、マスコミ各社は投資信託特集を組みました。07年末には「郵貯VS民間金融戦争勃発」といった記事が掲載されるかもしれません。

しかし、投資家であるなら、そうした騒ぎに目を奪われず、問題の本質を見る必要があります。

日本の民間金融は銀行、証券会社ともに、M&A(企業の合併・買収)に積極的に関わる「投資銀行」を目指しています。つまり、これから民間の金融機関が大きく収益をあげていく分野は、郵貯と直接はバッティングしないのです。そう考えれば、「郵貯VS民間金融戦争勃発」といった議論が、表層的なものでしかないと分かるでしょう。

しかし、世間的には「郵貯銀行の出現で民間金融が悪影響を受けるのでは」と捉えられ、民間金融の株価が下落するかもしれません。もしそうなれば、絶好の投資チャンスとなる可能性があります。

こうしたことに気づくことができるのも、あらかじめ「日本郵政公社民営化」というイベントを把握し、株価はどう動くのか仮説を立てたからこそなのです。

06年は残念ながら“ライブドア・ショック”に始まる「負のイベント」が株価下落圧力となってしまいました。今年も突発的な事件が発生する可能性はあります。しかし、根幹となるイベントを押さえておくというのは、海図を持っているようなもの。逆に、そうしたことを知らずに投資をするのは、荒れる海を、何の手がかりもなく航海するようなものなのです。 今回は、私が重要だと考えている内容を列挙しています。「1年の計は元旦にあり」。みなさんもぜひ、自分独自の投資カレンダーを作ってみみましょう。(木下)
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木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

投資脳のつくり方

マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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