新市場NEOの上場第1号が決定。新興市場の現状は?

新市場「NEO(ネオ)」とは?

ジャスダック証券取引所(以下ジャスダック)は10月9日、先端技術企業向け新市場「NEO(ネオ)」の第1号銘柄として、通信ソフト開発のユビキタス(3858)の上場を承認したと発表しました。

NEOは、独自の技術力審査で企業の将来性を見極めて上場を承認します。一方で、上場廃止基準では時価総額や株主数の基準に加え、基礎となる事業活動を停止した場合、3年以内に新技術などを用いた事業を再開しないと上場廃止にするなど、投資家保護にも力を入れています。

ジャスダックには現在、971社が上場していますが、旧店頭市場を引き継いだため、東証マザーズや大証ヘラクレスに比べ、製造業やサービス業が多く、成長企業向け市場のイメージが乏しいことは否めません。

そこでジャスダックは、日立製作所の庄山悦彦会長や学識者で構成する諮問機関を設置し、技術力評価のための体制を整えました。

今回、上場承認されたユビキタスは、マイクロソフト出身の技術者らが01年に設立した会社です。家庭用ゲームソフトに通信機能を持たせる技術を開発して成長してきています。新市場上場第1号として、今後に期待したいところです。【ポイント1】

ライブドアショック以降の新興市場

ジャスダックをはじめとする新興市場は、06年1月のライブドア事件など上場企業による不祥事が相次ぎ、個人投資家離れが加速しました。新興市場の売買は、個人投資家によるものが7〜8割を占めており、その影響は大きく、株価低迷が続いていました。

現在、東証マザーズ、大証ヘラクレス、ジャスダックの新興3市場への上場企業数は1,300を超えています。しかし、上場企業の「数」を求めるあまり、「質」の低下を招いたとの批判もあります。

そのため、日本国内の新規株式公開(IPO)は、07年9月に上場した全4銘柄の初値が公募価格を下回るなど正念場を迎えています。初値が公募価格に対して全敗したのは、ネット株バブルの後遺症に苦しんだ02年8月以来のことです。それだけ、新興株に対する信頼が揺らいでいたということです。

しかし、このところ変化の兆しが見られます。新興株の先行指数的な特徴がある東証マザーズ指数は10月9日、03年9月の算出開始以来初めての10日連続高を記録しました。9月18日につけた算出来安値と比べると、41%の上昇と大きく伸びています。

私がまぐまぐプレミアムで発行しているメルマガ『なぜ、この会社の株を買いたいのか?』で取り上げたマザース上場のアクロディア(3823)や ACCESS(4813)は、同期間でそれぞれ132.3%、73.9%の上昇となっています。このように、ここ1ヶ月で新興市場において急騰ともいえる株価の上昇があったのです。【ポイント2】

新興市場への投資の注意点

新興市場は、急激に下落したかと思えば、短期的に急騰することもあります。そのため、よい意味でも悪い意味でも、個人投資家の注目が集まります。では新興市場に投資する場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

最も重要なのは、東証1部など大企業への投資に比べ、「ギャンブル性に満ちた市場で勝負しているのだ」という点を忘れないことです。

新興市場に上場している会社の多くは、特定の商品や顧客に収益源が集中していることが多くあり、そこに変調が起これば、収益の減少や株価の下落につながってしまいます。

そもそも株価は、(1)資産価値、(2)収益価値、(3)夢・希望の3つの要素からできています。新興市場では、(3)にばかり注目が集まりがちです。だからこそ、冷静に資産価値や収益価値に注目することが必要なのです。【ポイント3】

新興市場への投資は、短期間で大きなリターンを得るチャンスがあることも否定できません。ですので、「新興市場は危ない」と無条件に敬遠するのではなく、投資家として許容できるリスクと向かい合い、リターンを狙うという姿勢が求められるのでしょう。

相場が分かる!今日のポイント

【ポイント1】
イギリスでも、ロンドン証券取引所の新興企業向け市場「AIM」が始動しています。しかし、ロンドン・ビジネス・スクールでアントレプレナーシップ(起業家精神)の講座を持つジョン・W・ムリンズ教授は、「流動性が低く、起業家たちの成長意欲をそいでいる」と語っています。新市場の動向は前途多難かもしれません。
【ポイント2】
新興市場は投機的な値動きが出やすい市場です。私は、投機自体を否定してはいけないと思います。そこで大きなリターンを得ることも可能だからです。重要なことは、「どれだけの資金を配分するか」ということ。資産管理は、個別銘柄の分析や選別以上に大事なことです。
【ポイント3】
資産価値には、保有する現金や有価証券、不動産などの目に見える資産に加え、ブランド力など目に見えない資産もあるでしょう。収益価値をみる上では、本業のもうけである営業利益が重要です。会社側の発表資料などをベースに、こうした要素をしっかりとチェックすることが投資を確かなものにするのではないでしょうか。

新興市場への投資は、不安と期待が渦巻いています。そして、時には業績などとはまったく関係なく買われたり売られたりすることもある、非常に不安定な市場です。だからこそ高いリターンが期待できることも事実です。
考え方は分かれると思いますが、私の新興市場への投資スタンスは、「一部資金を投じる」です。さらに詳細は、プレミアムメールマガジン『なぜ、この会社の株を買いたいのか?』で明らかにしています。ご興味ある方は投資の考え方を共有いただければと思います。(木下)
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木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

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マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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