初の三角合併実施。シティが日興を完全子会社化

三角合併の初事例

米シティグループ(以下シティ)は10月2日、傘下の日興コーディアルグループ(以下日興、8603)を完全子会社化すると発表しました。これにより、日興は08年1月にも東京証券取引所などで上場廃止となる見通しです。同時に、シティグループ自体が東証に上場する計画も明らかになりました。

今回の子会社化は、日興株主にシティ株を割り当てる株式交換方式が採用されました。5月に外国企業に解禁された三角合併の事実上の初事例となります。

日興の既存株主は、1株あたり1,700円に相当するシティ株を割り当てられ、交換を望まない株主は現金による買い取りを請求することができます。

三角合併は、国境をまたいだM&Aの際に、合併や買収の対価として現金ではなく、株式を使う手法です。

シティは現在、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で業績が悪化しています。そこで、現金の流出を避け、迅速に子会社化するため、株式交換という手法を選択したのでしょう。【ポイント1】

数、規模ともに増加するM&A

元々、日興はシティの傘下にあったわけですが、今回の完全子会社化で三角合併の例ができたことには変わりありません。ですので、前例に勢いづけられ、三角合併を利用したM&Aが増える可能性は十分にあります。そして、既にその予兆が現れています。

M&A仲介を行うレコフが10月3日に発表した07年1−9月の海外企業による日本企業のM&A件数は、前年同期比80.6%増の233件でした。調査を始めた85年以来最高だった04年実績(210件)を上回っています。

その中身をみてみると、アブダビ政府系投資機関によるコスモ石油への出資や、シティによる日興の買収など金額が大きいものもありますが、全体的には買収額の規模が小さいものが大半です。

しかし、投資ファンドのコメントを聞いていると、これから件数だけでなく、規模も大きくなってくることが予想できます。

例えば、大型投資ファンドのカーライル・グループ創業者ルーベンスタイン氏は「買えない会社はない」と話していますし、同グループ日本代表の安達保氏は「理論上は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が日立製作所を買うことだってありうる」と発言しています。

今後、日本でのM&Aは案件数、金額ともに増加基調となるというのが私の考えです。その際の手法として、三角合併が選択される可能性も十分にあります。【ポイント2】

個人投資家はどう対応すべきか

海外企業による日本企業の買収が増加するとしたら、私たちはどのような対応をすればよいのでしょうか。シティと日興の事例からは多くの問題が浮かび上がってきます。

もしあなたが日興の株主だったとすると、まず保有している日興株をシティ株と交換すべきかどうかを判断しなければいけません。

その際、サブプライムローン問題の影響をはじめ、シティグループ自体の財務分析が必要になります。それは日本企業に比べ、情報の入手経路も限られており、非常に煩雑な作業です。

さらに、シティは東証への上場を申請していますが、たとえ上場が認められたとしても外国株です。日本株を取り引きするための口座とは別に、外国証券取引口座を開かなければいけません。通常、その際には口座管理手数料が必要になります。

現状、外国株の売買は決して活発とはいえません。つまり思うように売買できないリスクがあるわけです。その場合は、海外市場で売買が必要なケースも出てくるでしょう。そうなれば、日本国内に閉じない、グローバルな視点が必要になります。【ポイント3】

5月の解禁以来、時間はかかりましたが、やっと三角合併の第1号案件が誕生
しました。投資家としては、これをきっかけに三角合併が増加する可能性を踏えた心構えが必要でしょう。

シティと日興の案件は、日興株主にのみに関係する問題ではありません。今回の事例を契機に、全ての投資家が「自分が投資、保有する株が外国株になっても大丈夫」と自信を持って言えるよう、準備をすべきでしょう。

相場が分かる!今日のポイント

【ポイント1】
欧米企業では、子会社を上場したままにしないケースが一般的です。それもあって、シティは日興の完全子会社化、上場廃止を決めたのでしょう。それにより、少数株主持分の流出も防ぐことができます。
一方で、日本では上場子会社はごくごく一般的なことです。日本で海外企業によるM&Aが増加すれば、「上場子会社をどうするか」という問題が頻出することになるでしょう。
【ポイント2】
M&Aアドバイザリー会社のGCAホールディングス(2126)がシティによる日興の完全子会社化で、日興側に助言することを公表しました。すると、今後の収益拡大への期待感が膨らみ、同社の株価が大きく上昇しました。M&Aの裏には必ずフィナンシャルで収益を狙う企業がいます。これは大手証券会社も同様です。
【ポイント3】
グローバルな投資が増えてきたとはいっても、現状の状況は海外の国債などに投資する毎月分配型の投信が中心です。最近でこそ、BRICsを始めとした新興国への投資も活況ですが、各国証券取引所が算出する平均株価に連動する投資信託がほとんどです。まだまだ海外株を個別取引する投資家は少ないのが現状ですが、そうした状況が変わってくる可能性は十分あります。

サブプライムローン問題によってM&Aが減少するのではないか、という意見もあります。でも、それは一時的なことでしょう。再びM&Aが活況をみせるとき、日本がその主戦場になることも十分考えられるでしょう。(木下)

  • はてなブックマークに登録はてなブックマークに登録
  • BuzzurlにブックマークBuzzurlブックマーク数
  • [clip!]この記事をクリップ!

トラックバック

トラックバックはまだありません。

この記事に対するTrackBackのURL

最新コメント

コメントはまだありません。

name
E-mail
URL
画像のアルファベット
comment
Cookieに登録

プロフィール

木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

投資脳のつくり方

マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

メールアドレス: 規約に同意して

個別銘柄情報はこちら   まぐまぐプレミアム・有料メルマガ

なぜ、この会社の株を買いたいのか?
〜年率20%を確実にめざす投資手法を公開〜

ビジネス誌・マネー誌・テレビに登場するアナリスト、木下晃伸(きのした・てるのぶ)が責任編集のメールマガジン。年率20%を確実にめざすためには、銘柄選択を見誤るわけにはいきません。日々上場企業を訪問取材している木下晃伸が、投資に値する会社を詳細に分析、週1回お届けします。

【2100円/月(当月無料)/ 毎週土曜日】 購読申し込み