携帯電話事業がけん引。好決算ソフトバンクの今後は?

ソフトバンク、過去最高の売上高を記録

10月初旬をピークに世界的な下落基調が続く株式市場。しかし、下落基調はチャンスでもあります。なぜなら、魅力ある会社に割安で投資することができるからです。また、下落基調の中、好調さが際立つ企業を見つけることができます。

そうした意味で注目を集めそうなのがソフトバンク(9984)でしょう。

ソフトバンクが11月6日に発表した07年9月中間期連結決算は、営業利益が1,677億円と前年同期比49%増で、半期ベースで過去最高となりました。売上高も過去最高の1兆3,647億円と同22%増でした。

この好業績をけん引したのは携帯電話事業です。同事業の売上高は、前年同期比39%増の8,145億円、営業利益は同66%増の942億円で、全体の約6割を携帯電話事業で稼いだ形となっています。夜間を除き自社契約者同士の通話を無料にした低価格プラン「ホワイトプラン」などが功を奏し、純増数は114万件と前年同期の約12倍になりました。

私は、こうした状況を鑑み、個別企業の魅力をお伝えしているまぐまぐプレミアムのメルマガ『なぜ、この会社の株を買いたいのか?』の10月6日付記事でソフトバンクをお伝えしています。【ポイント1】

同社は携帯電話だけでなく、インターネット事業も好調でした。日経平均株価が大きく下落する中、業績の好調さが株価を下支えしているといえるでしょう。

ソフトバンク携帯、躍進のキガは?

ソフトバンクが好業績を収められたのは、一般的には前述の通りホワイトプランの効果だと思われています。もちろん大きな理由のひとつですが、携帯電話ビジネスというのはそれほど単純なものではありません。【ポイント2】

(1)ネットワーク
(2)端末
(3)コンテンツ
(4)マーケティング(料金/ブランド)

の4つの点を矢次ぎ早に改善したことが、ソフトバンク躍進の原動力となったのです。

まず、ネットワークというのは、分かりやすくいえば「つながりやすさ」です。同社はつながりにくさを解消するため基地局を増設しました。その結果、1年前に比べ3割近くつながりやすくなったという外部機関のアンケート調査もあります。

また、端末もシャープ(6753)のアクオス携帯を手始めに魅力ある端末を次々と発表、若年層の心をつかみました。もちろん、トップページにヤフーを搭載、コンテンツの利便性もアピールしています。

そして、料金。これは、ブラッド・ピットやキャメロン・ディアスを起用した洗練されたCMと、上戸彩を起用した身近で親しみのあるCMと両建てでブランドを構築し基礎を固めたところに、低料金プランを投入したことで、爆発的に加入者数を伸ばしたと考えるべきです。

追い風?ソフトバンクの今後は

かつて、NTTドコモ(以下ドコモ、9437)が、mova から FOMA に移行したとき、あまりにもつながらないという顧客の不満に対し、KDDI(9433)は、CDMAX1 という3G携帯を武器にシェアを獲得しにいきました。その結果、せっかくiモードという驚異的なサービスを作り上げたにもかかわらず、ドコモはKDDIの追い上げにさらされることとなりました。

このように、成熟しているように見える携帯電話ビジネスにおいても、シェアの変動は十分に起こりうるのです。

また、最近では、ドコモやKDDIに対する逆風も吹いています。公正取引委員会(公取委)は11月16日、携帯電話料金の割引制度に関する広告が景品表示法違反の恐れがあるとして両社に厳重警告しました。

警告を受けたのは、2年契約を前提に基本料金が半額になるドコモの「ファミ割MAX50」、「ひとりでも割50」と、KDDI(au)の同様の割引制度「誰でも割」の広告表示です。公取委は「半額」などの表記に比べ、2年の契期間内に途中解約した場合、解約金が発生することが極めて小さな文字でしか表記されていないことを問題視したのです。

ソフトバンクも、携帯電話の番号ポータビリティ制度開始直前の06年10月に発
表した料金プランに対し、公取委から警告を受けました。そのことで、ソフトバンクに良くない印象を持った方も多いでしょう。同様に、ドコモ、KDDIにも、今回の警告がいい影響を与えるはずはありません。

※ソフトバンクの番号ポータビリティ制度開始時の動向についてはバックナン
バー『「大人のソフトバンク」の0円攻勢で携帯業界は?』もご覧ください。

また、ソフトバンクはヤフー(4689)の大株主であるだけでなく、11月6日に香港市場に上場した中国の電子商取引大手のアリババの大株主でもあります。両社の日本市場での取り組みが実現されれば、大きな収益も期待できます。

ソフトバンクは、これから1,500万人の携帯電話ユーザーにたいしてリーチすることが可能で、そこには大きな可能性があります。孫正義社長の次の一手に注目が集まります。【ポイント3】

相場が分かる!今日のポイント

【ポイント1】
個人投資家のセンチメントを占う上でも、投資するか否かは別にしてソフトバンクは注意しておく必要がある会社です。かつては、大赤字を継続的に出していた同社も、今では安定的に収益を計上するようになりました。投資家の見方も以前とはずいぶん変わってきたといえます。
【ポイント2】
ビジネスの成功は、たった1つの要素で決まるものではありません。ビジネスモデルを多面的に分析することが重要だと思います。また、ビジネスモデルに興味がわくと、会社を調べることにも興味がわいてきます。今は、調べようと思う会社のホームページを見ると、会社がしっかりと資料を出していることが多くあります。それをじっくりと眺めてみればいいのです。
【ポイント3】
携帯電話ビジネスは、利用者が多いほど効用が高くなるという「ネットワーク外部性」が働きます。しかし、ネットワーク外部性に長けていても、費用対効果、技術の世代交代時期などを見誤ると、盤石にみえた優良企業でも簡単にトップの座を追われてしまうことがあります。ソフトバンクも決して今の好業績に甘んじることは許されないのです。

携帯電話ビジネスは、非常に学びの多い分野だと思います。ご興味ある方には、10月6日にお届けしたまぐまぐプレミアムのメルマガ『なぜ、この会社の株を買いたいのか?〜【ソフトバンク(9984)】〜携帯電話戦争第三幕〜』のバックナンバーをお送りいたしたいと思います。考え方のひとつとして、ご参考いただければ幸いです。ご興味ある方は【ネットセミナー視聴希望(マネーのまぐまぐ)】と題して、こちらにメールをお送り下さい。(木下)

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木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

投資脳のつくり方

マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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