『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

「原油の投機的売買の禁止」を打ち出したドイツの狙い

止まらぬ原油高騰の原因は何か?

穀物価格の上昇に伴う大騒ぎが一段落したのも束の間、今度は原油の値上がりが世間の耳目をさらに集めている。今年に入って1バレルあたり30ドル以上も高騰してきたというのだから尋常な騒ぎではない。


もっとも、「需要が多いから価格が上がる」などと単純な構図で語ってはならないだろう。一般に商品(コモディティー)価格は“需給バランス”以外に“地政学リスク”、そして“投機的売買”から形成される。地政学リスクとは、テロや戦争などによってコモディティーの産出に支障をきたしていないかということを指す。


それに対し投機的売買とは、需給バランスや地政学リスクとは全く関係がなく、とにかく「上げる時には上げる、下げる時には下げる」という手合いのものである。


国際的に原油高騰に対する非難の声が高まる中、米政府高官や石油メジャーの要人たちは皆、口をそろえて「原油高騰は需給バランスによるもの。BRICsなどからの需要がうなぎのぼりである一方で、産油国が供給量を増やさないことにこそ問題がある」と説明する。ところが、産油国側はというと、「原油高騰は投機的売買によるもの。需給バランスによるものでは断じてない」と鼻息が荒い。私たちは一体、そのどちらを信じれば良いのだろうか?

原油の投機的売買禁止を画策するドイツ勢

私が率いる研究所が、去る2日に発売を開始した「IISIAマンスリー・レポート」2008年6月号においても詳細に記したのであるが、こうした2つの相対する見解が世界で交錯する中、ここに来て密かにドイツ勢が動き始めたようだ。


ドイツはG8の枠組みを使って原油の投機的売買を禁止するよう、世界に対して求めるというから驚きだ(5月26日付英デイリー・テレグラフ参照)。現段階で詳細は判明していないが、ドイツ政府与党関係者からは、「これは非常に過激な措置だが、行わなければならないことでもある」と強気の発言が出ているのだという。


「原油の投機的売買を禁止するだって?そんなの無理に決まっているじゃないか」。そう思われるかもしれない。しかし、ちょっと待って頂きたい。このコラムの熱心な読者の方であれば既にお気づきかもしれないが、実はこうしたドイツによる“先走り”はどこかで見た気がしてならないものでもあるのだ。


ドイツは昨年(07年)、G8の議長国であった。ハイリゲンダムでG8サミットを開催し、そのホスト国となったのであるが、それに先立つ06年秋頃より、何を思ったのか「ヘッジファンド規制」なるものをぶち上げたのである。


しかし、ヘッジファンドは金融資本主義においてもはや無くてはならない存在となっている。現在では大陸ヨーロッパの金融機関も利用しているが、そもそも英米の金融文化において生まれたものであり、とりわけ米英がそれに対する“規制”に頷くはずもない。


実際、ドイツ勢はその後、果敢にも「ヘッジファンド規制」を求めて画策するが、米英が猛烈に反対。結局、金融機関たちによる自主規制といった形で落ち着き、ヘッジファンドに対し上から圧力をかけるという意味での規制にはならなかったのである。


ところが、その後、一体どうなったのか?昨年8月よりサブプライム問題が炎上。その中で「越境する投資主体」の典型であるヘッジファンド勢が続々と延焼し始め、ついには巨大ファンドの破綻が相次ぐといった事態にまで至ったのである。


そして今、ドイツは原油の投機的売買を禁止すべく動き始めた。かつてIMF(国際通貨基金)の専務理事(トップ)であったホルスト・ケーラー大統領までもが旗振り役となって、「カジノ資本主義」への批判を強める中、ついには究極のコマを動かし始めたというわけなのだ。ヘッジファンド規制、そしてサブプライム問題という流れを思い返すと、今の流れと妙に重なる部分があるように思えるのは私だけだろうか。やはり、「歴史は二度繰り返す」というわけなのだろうか。

システム大転換の中で「想定外」の出来事がこれから起こる

ドイツ勢によるこうした密やかな企てを含め、これから始まるシステムの大転換について、私は6月7・8日に横浜・東京、6月28日に神戸・大阪でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)でじっくりお話できればと考えている。


是非注意しておいていただきたいのは、今年になって再び急激に進展し始めた原油価格高騰の中で、「この高騰は、石油取引が米ドル建て決済である中、米ドルが下落していることによる」という言論が広く流布されてきたことである。つまり逆にいえば「原油価格が下落する時、米ドルがむしろ“高く”なる可能性が充分にある」ということなのである。


しかし、サブプライム問題をきっかけに米国経済の低落がもはや誰の目にも明らかだというのに、いまさら「米ドルが上がる」ということが果してあるのだろうか?普通に考えれば、「甚だ疑問」ということになるだろう。


もっとも、想定外のことがあえて起こされることで、マネーが怒涛のごとく動いていくのが金融マーケットの常でもあるのだ。そして「想定外」が想定外であるだけに、こうした逆流は時に政治・軍事・外交にもあふれ出し、世界史を大きく揺り動かしていくこととなる。ドル高への転換が円安を伴う時、日本株マーケットにも影響が生じないわけがない。どうやら、ますます私たち日本の個人投資家たちは、エキサイティングな“不確実性の時代”を生きていくことになりそうである。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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