東国原知事は“地方の小泉”?株価上昇のカギは地方の復活

日経平均が1万8,000円の大台突破、さらなる上値余地は?

日経平均株価は6月1日、一時1万8,000円台を回復し、一進一退が続く株式市場にも明るさが見えてきました。しかし、実際に投資をしていると、「株高はいったいいつまでどこまで続くの?」と心配になるものです。

価格が下がればもちろん怖い。株価というのは上がっても下がっても、何かしら怖いのです。

そうした不安を払拭するためにも、日経平均株価がこれからどうなるのかという、全体の方向性に対して、自分なりの目安を持っておく必要があります。

日経平均株価はこれからどうなるのか?――私は1つの仮説を元に、「2015年までに3万円になる」という、一見すると大胆な予想を持っています。

その仮説とは、「一番お金を使う世代」が増えるとき、日本でいえば「40歳〜44歳」の人口が増加するとき、株価は上がるというものです。【ポイント1】

こちらの表をご覧いただけるとその関係が分るでしょう。

では、なぜ、「一番お金を使う」世代が増えると、株価は上がるのか。それは、そのタイミングで景気が良くなる、ただそれだけのことです。

景気を表すGDP(国内総生産)の6割(米国は7割)は、みなさんの財布の中身、つまり、個人消費が占めています。一番お金を使う世代が増えれば、個人消費も増えます。そして、個人消費が増えれば景気が拡大し、株価も上昇するというわけです。

日本の総人口は2005年をピークに減少しています。しかし、お金を使う40〜44歳の世代は、2003年を底に2015年まで増えていきます。ですので、株価は2003年を底に長期上昇相場に入り、2015年の株価水準は3万円になると予想しているのです。

実感なき景気回復と地方の苦境

確かに、このところ景気が回復しているというニュースをよく耳にします。しかし、皆さんは景気回復を実感できていますか?正直なところ、まだまだ厳しいと感じていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

最近では、「4月の完全失業率3.8%」という発表がありました。これは9年1ヶ月ぶりに、3%台を回復した画期的な数字です。

これだけみれば、確かに景気は良くなっているような気がします。しかし、生データを見ると、働き盛りの35歳から44歳では、逆に前年よりも失業率が上がっているのです。

また、景気動向が最もはっきりと表れる給料をみてみると、06年の平均の基本給は、98年より月額2万円以上も減少しているのです。新聞には「最高益更新」といった企業業績の好調さを伝える記事があふれているにもかかわらず、です。

地方はさらに厳しい状況に置かれています。

例えば、長崎県を地盤とする九州親和ホールディングス(8340)が、傘下の親和銀行をふくおかフィナンシャルグループ(8354)に売却し、会社を清算することを決めました。公的資金を注入したものの、多額の不良債権を処理できず、自力再建を断念した格好です。【ポイント2】

こうした状況を知れば、なかなか景気が回復しているという実感は持てないでしょう。

東国原知事は小泉前首相と同じ?

しかし、現状だけでなく、今起きていることが将来にどうつながるのかを考えることで、投資のチャンスを見出すことができます。

キーワードとなるのは地方です。宮崎県のそのまんま東こと東国原英夫知事がなぜ高い支持率を得ているのか。そして、なぜ今、地方版の産業再生機構「地域力再生機構(仮称)」の創設が決まったのか。

この2つを、上記の地方のおかれた厳しい状況と重ね合わせて考えると、地方が今変革のときにあり、これから大きく復活するタイミングであることに気付けるはずです。

バブル崩壊の後遺症に苦しむ日本を大きく変革したと外国人投資家からも高く評価されている小泉純一郎前首相は、改革を断行し、経済回復、株価上昇の足がかりを作りました。

東国原知事は、景気悪化を食い止め、改革を行うことで復活を目指すという、小泉前首相とまさに同じことを行おうとしています。だから、小泉前首相同様、高い支持率を得ているのです。【ポイント3】

※東国原知事の支持率については「宮崎日日新聞」の記事を参照

そして設立が決まった地域力再生機構は、小泉氏が首相を務めていた03年に設立された産業再生機構と同様の役割を、地方において果たすことが期待されています。

産業再生機構は、官製ファンドとして民間金融機関と協働し、不良債権問題解決に大きな役割を果たしました。

地方銀行は、メガバンクに比べまだまだ不良債権比率が高い状態にあります。地域力再生機構によって地方の不良債権問題解決の糸口が見つかれば、地方の景気回復も本格化するでしょう。

こうした地方での取り組みが、目に見える形で成果を出すのは数年後になるかもしれません。しかし、これから地方、そして日本全体の景気が本格的に拡大していくと予想できれば、最初に述べたような不安を感じずにすむでしょう。

長期上昇相場に入った日本の株価は、地方の景気回復でさらに弾みがつく。株価は景気回復期待をいずれ織り込んでいくのではないかと私は予想しています。

相場が分かる!今日のポイント

【ポイント1】
私は、人口と株価の連動性に関して、駆け出しの頃足しげく通っていた日用品メーカーへの取材からヒントを得ました。彼らは「世代マーケティング」など、誰がお金を使っているのか、お金を使っている層にどう訴求していくか、といったことの検証に、かなりの経営資源を割いているという話を聞いて、ピンときたわけです。
ファンドマネジャーやアナリストは、取材をしていても株価についてはほとんどお聞きすることはありません。株価にあまり関係しないことが、逆に株価に直結するヒントになることがよくあるのです。
【ポイント2】
私も職業柄地方に出張に出かけることがあります。そこで、「本当に景気は回復しているのか、これから景気は回復するのか?」という言葉をよく聞きます。数年前を思い出してみれば、大手メガバンクが不良債権処理を行って日本で一番稼ぐ会社になると誰が思ったでしょうか。目の前の事象に惑わされることなく、現在起こっている「将来につながること」に目を向ければ、弱気になる必要はないのではないか、と考えています。
【ポイント3】
小泉前首相にしても、東国原知事にしても、「分かりやすい」ですよね。変革、改革は分かりやすくないとダメです。既得権益を壊されたりするわけですから、一気呵成に行わなければならない。東国原知事には賛否両論いろいろあるとは思いますが、地方がいよいよ本格的に変わろうとしている息吹を私は強く感じます。

今回は長期的なロードマップがあり、そこに、具体的な事象がどう影響するか、ということについて書きました。ニュースをつぶさに観察することで、今は悪い面かもしれないが、これから良くなっていく変化を読み取ることができるのではないでしょうか。ニュースに関しては、平日毎日、無料メールマガジン『投資脳のつくり方』でお伝えしています。ぜひ、こちらもご覧ください。(木下)

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木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

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マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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