投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
「魚」を狙う米国の日本買いに備えよ!
人知れず開催された「養殖サミット」
これだけ大小のメディアがひしめいているというのに、日本では全く報じられない出来事がある。その一つが7月初旬に2日間にわたって米国・ワシントンで開催された「養殖サミット」だ。
香港の有力紙『ザ・スタンダード』の7月2日付記事によれば、この場で米国の政府と漁業関係者による世界中の養殖産業への「貪欲さ」が露わになったのだという。米国といえば、ウォール・ストリート仕込みのバリバリの金融資本主義だけの国と思われがち。
しかし、実際の様子はまったく異なる。「世界最大の農業国」であり、同時に「海に囲まれた海洋国家」でもある。日本同様、「魚」にはひとかたならぬ関心がある国だ。思えば幕末、日本に開国を求めてきた米国の狙いも、クジラ漁の中継地点を確保することであった。時代は移り、人は変わっても、地理的関係は変わらない。
いや、マーケットがあれば、人より先に出かけ、「仕掛け」「壊し」「奪い去る」能力という意味では、20世紀に入ってからの米国のグレードアップはすさまじい。その米国が、首都ワシントンで「養殖サミット」を行ったというのだ。そこに彼ら特有の計算がないはずがない。
魚を食べない日本人が魚のために奪われる日は近い
この報道によれば、現在、海産物の約半分が養殖であり、しかもその9割ほどがアジアで産出されるものなのだという。実際、今や、世界最大の水産資源消費国となりつつあるのが中国である。所得が上がるにつれ、中国人たちは次々と高級食材を世界中で買い求めるようになっている。その際、最も狙われているのが高級魚介類。内陸部であっても、海の幸を食べることは、いわば中国人にとっての「ステータス・シンボル」なのだ。
その一方で、ますます魚を食べなくなっているのが日本人である。すぐれた漁業関連技術を持つ企業が山のようにありながら、消費量は減る一方。日本人の目にとっては漁業はさびれゆく「第1次産業」の典型ととらえられている。
しかし、今や「越境する投資主体」たちが世界中を動き回る時代である。マーケットがあり、そこで「高値売り抜け」が期待できるのであるならば、次々に買収を繰り返しては、至るところで利益を上げていくのが彼らのやり方である。
この時、「漁場としてのロシア」「加工・養殖技術の日本」「消費地としての中国」という三つが彼らの目線にとまらないと誰が言うことができようか。そうなれば当然、米系を中心とする欧米系の「越境する投資主体」たちのターゲットは日本の水産関連企業ということになる。嘘だと思うのであれば『会社四季報』などでご確認されれば良い。
名だたる水産関連企業の資本構成を見ると、それほど下位でない場所に、彼ら「越境する投資主体」たちの名前を見つけることができる。そう、ここでもまた、「知らぬは日本人だけの日本買い」の現実が着々と進みつつあるのだ。
欧米の「手口」を早急に学ぼう!
名古屋(7月22日)、金沢(9月15日)、そして仙台(9月22日)と開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の無料学習セミナーでは、こうした「日本人が知らない日本買いの現実」について、IISIAとしての分析を徹底的にご披露しようと考えている。
去る7月7日には同じく無料学習セミナーを北海道の札幌で開催。ご出席いただいた方々からは、「欧米の越境する投資主体たちの『手口』がたちどころに理解できた」とご好評であった。
そう、これからのマーケットで生き残るために、日本の個人投資家にとって必要なのは、彼ら=米系を中心とした「越境する投資主体」の目からみて、いったい私たちの国・ニッポンがどう見えるのかを理解することができるセンスなのである。
「魚」を「さかな」と見ることで、「日本人は魚を食べなくなっている」との固定観念にとらわれているようでは、絶対にダメなのだ。不気味なほどに静かな高揚感が漂う日本マーケットだからこそ、必要なのは、どこに本当の「宝の山」が眠っているのかを見透かすことができる、冷静な「第3者」のまなざしなのだ。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
- ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト
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