相次ぐ赤字、金融不安はまだ続く?08年後半の株価を読み解く鍵とは

最終赤字、大幅減益…苦戦の金融各社決算

サブプライムローン問題が表面化してから約1年が経過しました。しかし、混乱が完全に解消されたとは、とてもいえない状況が続いています。株式市場も、突破口を見出せず軟調な展開が続いています。

くすぶる不安の一番の要因は、やはりサブプライムの影響を直接的に受けた金融セクターでしょう。

すでに出揃った国内主要証券会社20社の08年4−6月期決算を見ると、サブプライム問題に端を発した市場の混乱の長期化を背景に、5社が最終赤字となり、12社が前年同期比で減益となっています。

最大手の野村ホールディングス(8604)は、元社員によるインサイダー事件の影響もありますが、新たに発生したサブプライム関連の損失も大きく響き、最終損益で765億円の赤字となりました。

最終損益が58億円の黒字と、赤字を免れた大和証券グループ(8601)も、前年同期比では78%以上の大幅減益。法人取引を担当する子会社大和証券SMBCは112億円の赤字と、非常に厳しい内容です。

大手銀行も同様です。三井住友フィナンシャルグループ(8316)の連結純利益は前年同期比で半減。サブプライム関連の損失を100億円計上したことに加え、保有債券の値下がりで、傘下の銀行が約300億円の損失を出した結果です。

みずほ(8411)、りそな(8308)は増益を確保しましたが、本業の儲けを示す実質業務純益は減少しています。【ポイント1】

ゼファー破たん、“総崩れ”不動産セクター

ではサブプライム問題の“震源地”米国の金融各社の決算はどうだったのでしょ
うか。

米大手証券メリルリンチが7月17日に発表した4−6期決算は、最終損益が46億5,400万ドル(約5,000億円)の赤字。同じ赤字とはいっても、日本の証券会社とはその規模が違います。同社の赤字は、4・四半期連続で、赤字幅も、前の期の19億ドルから拡大しています。

また、米大手銀行シティグループの決算は、最終損益が25億ドル(約2,670億円)の赤字となりました。サブプライム関連の損失は116億ドル(約1兆2,400億円)で、直近1年の累計では570億ドルを超え、世界の金融機関で最大規模となっています。【ポイント2】

また影響は金融に限ったものではありません。特に不動産セクターは苦戦を強いられています。

例えば日本では、東証1部上場の中堅デベロッパーであるゼファー(8882)が7月18日に東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。

ゼファーは94年の設立から6年で株式公開を果たし、07年3月期には売上高1,279億円、経常利益117億円を上げるまでに成長した企業です。それほど稼いでいた企業が、1年半後には資金繰りに行き詰まり破綻してしまったのです。

ゼファーだけでなく、不動産セクターでは大手でも利益大幅減の決算や、株価低迷など「総崩れ」ともいえる様相を呈しています。

「景気後退、本格化」を示唆する指標、株価はどう動く?

そして影響は、金融、不動産だけにとどまりません。

経済産業省は7月30日、4−6月期の鉱工業生産指数が2・四半期連続で前期比マイナスとなったと発表しました。これは、非常に重要な「景気後退のサイン」と受け止められています。

なぜなら、過去30年を振り返ってみると、鉱工業生産指数が2・四半期連続でマイナスになると、例外なく景気後退期に入っているためです。実感がないとはいえ、表向きは景気拡大が続いていた日本も、「とうとう腰折れか」と不安が高まっているのです。

個別の企業を見ても同様です。例えばトヨタ自動車(7203)の場合、米国の旺盛な個人消費があったからこそ、好調な業績を維持してきました。しかしここにきて、米国での不振を受け世界販売の下方修正を発表しています。

そうした状況を受け、日経平均株価も低迷しています。6月には1万4,000円前後で推移していましたが、8月4日の終値は1万2,933円と、1万3,000円の大台を割り込んでしまいました。ゼファーのような大型の破たんが続けば、その影響はさらに深刻なものとなるでしょう。【ポイント3】

では、こうしたサブプライムに端を発する問題はいつまで続くのか。

日本の金融機関の四半期決算を見ると、確かに赤字、大幅減益など厳しい内容となっています。しかし、サブプライム関連の損失額は、昨年計上した額と比べると10分の1程度に収まっています。その意味では、「膿は出し切った。終局が近づいている」といえるのかもしれません。

しかし、上記の鉱工業生産指数やトヨタの例でも分かるように、すでに「金融セクター」に限定された問題ではなくなっています。米国の景気後退、原油をはじめとした物価高騰など課題は山積です。実体経済にまで影響が出始めており、金融セクターが最悪期を脱したからといって、すぐに株価も回復するとは期待しづらいでしょう。

そうした状況を考えると、私は株価はしばらくの間、ボックス相場の中で一進一退を繰り返す、と考えています。

相場が分かる!今日のポイント

【ポイント1】
日本の金融機関は、世界から見て極めて信用力が高いことは間違いありません。つい先日、米大手証券ゴールドマン・サックスがリポートで「邦銀が買い」と述べたほどです。しかし、足元の業績が悪いと株式市場は一喜一憂するものです。今の短期的な下落は、むしろチャンスと捉えることもできるでしょう。
【ポイント2】
シティグループはNYダウの構成銘柄です。その業績が悪化し株価が下落すると、どうしてもNYダウを押し下げてしまいます。しかし、個別に見ていくと、IBM、ジョンソン&ジョンソン、マクドナルド、ウォルマートなど世界的に有名な企業の株価はしっかりと高値圏を維持しています。 全体を見るとともに、個別銘柄もしっかりと吟味する必要があります。
【ポイント3】
ゼファーのケースを考える際には、実需だけではなくファンドの存在も見逃してはいけません。実際、民事再生法の適用申請の際に記者会見した同社の飯岡隆夫社長は、外資系ファンドの不動産物件への投資が縮小したこともあり、「今年1月以降、売却先からキャンセルが急激に増えた」と、経営破たんの理由を語っていました。

8月15日には終戦記念日がやってきます。戦後、焦土からよみがえった日本。そしてそれと歩調を同じくして成長していった株式市場。8月は過去を認識しなおし、過去に思いを馳せる月だと思います。 新聞を開くと、気持ちがなえそうなニュースばかりが飛び込んできます。だからこそ、愚直にインプットを増やし、多面的な分析を行うことが必要です。8月にかいた汗は、きっとその後のパフォーマンスとして現れるでしょう。(木下)

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木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

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マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

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