『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

仕組まれた豚インフルの向こう側で起きる「潮目」とは?

突然始まった豚インフルエンザ禍

「鳥インフルエンザなら何度も聞いている。しかし、今度は豚インフルエンザだって?」。第一報を聞いた時、読者の多くがそのように思われたに違いない。メキシコで罹患を告げる第一報のあった「豚インフルエンザ」は、その後一気に拡大。100人を優に超える死亡者を出しながら、“震源地”であるメキシコからその触手を着実に伸ばしてきている。


「インフルエンザ?それならワクチンだ!」という呼び声につられるかのように、その後、各国が対応するワクチンを買い漁る展開へ。有名医薬品メーカーのみならず、関連する医薬品開発を行っていたベンチャー企業にまで注目が集まり、それによってマーケットが乱高下し始めている。その一方で、“死の商人”ではないが、幼い犠牲者も含む死亡者たちの命と引き換えに、これら企業が利潤を上げているのではないかと揶揄する言論すら出始める始末。事態は早くも混乱の極みに達しつつある。


そのような中、今、OSINT(公開情報インテリジェンス)の世界において1つの重大な疑念が持ち上がりつつある。「この豚インフルエンザ禍は本当に“自然現象”なのか?それとも、ひょっとしたら誰かが仕掛けたものなのか?」。このような話をし始めると、必ず“陰謀論(consipiracy theory)はもう止めろ”と(妙なほど激昂した口調・文体で)叫び始める向きがいる。確かに、世の中で起きる森羅万象の全てについて、誰かの意図的な行動から直接的な影響が見られると断言すべきではないだろう。しかしだからといって、“あり得べき出来事”についてその因果関係を推論し、その原因について探求するという思考プロセスを頭の中に置いて行動することが、誤りであるということにもならないのである。なぜなら、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を揺さぶる出来事の全てについて、その要因を立証することが事実上不可能であるのと同じく、それが「その要因ではない」と言い切ることもまた出来ないからである。――潮目を巻き起こす“真実”は常に、懐疑するところから始まるものだ。

15年前に「2009年インフルエンザ流行」を予見していた米軍

そのような中、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、ここにきて1つの気になる情報が飛び込んできた。


実は米軍(空軍)が今から15年前(1994年)の段階で、すでに「2009年にはインフルエンザが大流行する」との予測分析を提示していたというのだ。問題となっている文書のタイトルは「2025年の米空軍(Air Force 2025)」。米空軍司令部がこれからの世界情勢を展望する中で、今後の米空軍としての在り方に関する提言を米空軍大学(Air University)に対して求め、それに対して同大学側が答えた報告書という体裁をとっている。それによると、驚くべきことに「2009年にはインフルエンザが大流行し、その結果、全世界で3000万人が死亡する」のだという。特にそうした大流行(パンデミック)の前提条件とも解釈できる書き方がされているのが、このインフルエンザが“中国南部(southern China)を襲うこと”にあるという点である。


ちなみにこのコラムを書いている4月末日の段階で、豚インフルエンザ禍が日本はおろか、中国を直撃したとの情報には接していない。その限りにおいてこの報告書の示す“予測分析”は事実と異なるかのように見えなくもない。しかし、まだ現実がこれからどのように推移するのかは、誰にも予断できないのだ。病原体が全く違うとはいえ、2003年に謎の熱病「SARS」に襲われた中国人たちの間で仮に豚インフルエンザが拡大するようなことがあれば、6年前の深い傷跡と記憶がたちまちよみがえり、中国のマーケットと社会が大混乱になることは間違いない。その意味で、ストーリーはまだまだ続いている可能性は十分にあるのだ。

これから何が起きるのかを見極めるためには?

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中でとりわけ米国勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は5月9日、10日に東京、名古屋、そして5月23日、24日に東京、大阪でそれぞれ開催する「新刊記念講演会」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きはぜひともお集まりいただければ幸いである。


もちろん、パンデミックの発生はマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を大きく揺さぶる。不思議なことに昨年(2008年)の段階で世界銀行が「パンデミックはどのような影響をマーケットに与えるのか」という“予測分析”を提示しているというのだから、あまりにも用意周到というべきではないだろうか。ちなみにこの“予測分析”によれば、パンデミックの発生は総額で3兆ドルもの損失を世界中で発生させ、さらには世界経済全体としての成長率を6%マイナスにまでする効果を持つのだという。ただでさえ金融メルトダウンによってマイナス成長が予期されているというのに、その真っただ中で本当にこれが現実になったとすれば一体どうなるのか。――想像して余りある事態であろう。


報告書「2025年の米空軍」には“続き”がある。「2010年に地域紛争が増加するあまり、国連が崩壊する」「2012年に強烈な電波が照射される結果、ウォールストリートが完全にマヒする」などなど、その“予測分析”は余りにも刺激的なものばかりだ。しかし、だからこそ公開情報の中からであっても、丹念に“真実の芽”を集め取る必要がある。そして、それらをつなぎ合わせて、予測分析シナリオをつくりあげることで「真実」に肉薄することが、私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンには求められているというべきだろう。誰かのように「起きていることはすべて正しい」などと独りよがりの“思考停止”に陥る暇など、全くないのである。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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